最近は、電子契約サービスを取り入れる企業が増えてきました。
電子契約には、電子署名が不可欠です。
電子署名とは、「電子化された文書の著者が、自分が書いた文書であることを証明するための電子化された署名」のことを言います。
従来の紙媒体の契約と比較して、たくさんのメリットがあるため、よりいっそう電子署名が注目を浴びるようになりました。
電子契約サービスの中でも、大手なのがGMOサインとドキュサインの2社です。
この2つのサービスの電子契約サービスの違いについて比較してみることとします。
電子署名とは
電子署名とは、広義では、電子メールで送受信する契約書データに署名捺印する行為を意味することもあります。
しかし、一般的には、署名・捺印を電子上で行うことを言います。
従来の紙による契約書は、実印による押印をしたり、印鑑証明書を添付したり、契約書各ページに割り印をしたりして、本人確認や契約書の偽造・変造の防止をしていました。
電子契約においても、押印や手書きの署名と同じような法的効力を与えるために、国は第三者認証機関を設け、電子署名の仕組みを整えるための法律を制定しました。
こうして、電子署名は押印や手書きの署名と同じような効力が認められるようになったのです。
今後、インターネット社会がますます進んで行くことを考えると、電子署名のはたす役割はさらに大きくなる一方でしょう。
デジタル庁は、「暗号化をすることで、電磁的記録に記録された情報の作成者を担保し、改変があればすぐにわかる方法」のことを電子署名と定義しています。
わかりやすく言えば、電子署名とは、作成したのがまちがいなく本人であり、なりすましがなく、内容が書き換えられていないことを証明するものです。
電子署名の役割
電子署名には2つの大きな役割があります。
1つは第三者認証機関によって、本人が署名捺印したものであるという証明が可能なことです。
文章を作成した人および作成日時が、第三者認証機関に記録されることによって、その人が作成した文章であることが証明されます。
もう1つは、署名後に書き換えられるおそれがないことです。
文章に電子署名をすれば、第三者がその文章を変更しようとした場合、アラートが表示されます。
電子署名の法律
平成13年(2001年)4月1日から施行された電子署名法によって、電子署名が紙媒体による署名や押印と同じ効力があるとする法的根拠ができました。
電子署名法によって、作成者が電子署名法に準拠した電子署名を行った場合、その人の意思に基づき作成された真正な電子文書とされることになったのです。
さらに、新しく認定制度が設けられ、一定の基準をクリアした認証業務は、国の認定を受けることができるようになりました。
電子署名法の目的は、「電磁的方式による情報流通、情報処理、電子署名の利用の促進をはかること」です。
その結果、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展につなげることができます。
認証事業者の制度に従って電子署名された文書は、「真正に成立したものと推定」され、電子署名された文書が信用性を持つことが保証されています。
あわせて、認証事業者に虚偽の申請をした者に対しては罰則が設けられました。
電子署名の仕組み
電子署名の仕組みは次のような流れとなっています。
- 文書作成者は、国の許可を受けた認証事業者に電子署名の利用登録申込みをすることで、電子証明書と公開鍵・秘密鍵を受け取ります。
電子証明書とは、印鑑登録証明書と同じ効力を示すものです。
公開鍵・秘密鍵とは、いわばパスワードのようなもので、データの復元をするために必要なものです。
公開鍵とは、契約先から照会を受けた時に、認証事業者の手によって公開されるもので、秘密鍵とは、自社のみで保有するもので、誰にも渡されません。 - 文書の作成者は、契約相手の公開鍵を使って文書データに暗号をかけ、電子署名をし、自社の電子証明書といっしょに契約の相手方に送付します。
- 文書を受領した相手は、送られてきた電子証明書が利用者本人の書いたものであることを確認するために、認定事業者に照会をかけます。
- 本人が書いたものだと確認ができたら、相手方から渡された秘密鍵を使って文書データを復元します。
秘密鍵で復元できれば、公開鍵で暗号化された文書と同一のものであるというわけです。
こうして、契約当事者双方が同じ文書を保管可能になります。
電子署名のメリット
コロナ禍の影響もあって、リモートワークが浸透してきました。
これからは、紙媒体による署名や捺印がすたれ、電子署名がさかんに行われるようになるでしょう。
電子署名には次にあげるメリットがあります。
業務の効率化
紙媒体による契約書では、社内の各部署を回って決裁を取得したり、相手方の署名捺印をもらうために訪問したり、郵送するために郵便局へ持参したりしなければなりません。
書類のやり取りのためにかなりの稼働がかかってしまいます。
一方、電子署名の場合は、オンライン上ですべての手続きを行うことが可能です。
そのため、時間や手間を削減することができ、業務効率化がはかれます。
改ざんが困難
電子署名により、公開鍵と秘密鍵を使って文書を暗号化した場合、そもそも書き換えが困難です。
また、第三者が書き換えようとした場合、アラートが出されるので、かいざん文書の検出が容易です。
文書の保管が容易
電子署された電子契約は、ファイリングが不要ですし、保管スペースも必要ありません。
一方、紙媒体の契約書は、ファイリングの手間がかかりますし、ファイルの保管場所も必要です。
取引先の理解が必要
電子データへの信頼はいまだに低く、契約書といえば紙媒体という認識が根強く残っており、電子署名を使用したがらない事業者も多数存在します。
しかし、契約相手との同意・合意があって成立するのが契約というものです。
取引先の電子契約や電子署名への理解がなければ、電子署名を行うことはできないでしょう。
電子署名を行いたい場合は、取引先にそのメリットを理解してもらう必要があります。
GMOサインとは
GMOサインとは、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子契約サービスです。
料金
GMOサインは、2021年6月から課金方法が文書単位から送信単位に変更されました。
GMOサインには、立会人型(事業者署名型)と当事者署名型の2つがあります。
立会人型も契約者型も、基本料金は月額9,680円で、ユーザー数は無制限です。
従量課金の方は、立会人型が1送信110円で、当事者型が1送信330円です。
ただし、API連携を行う場合は、別途月額11,000円がかかります。
さらに、基幹システムやMAツールとの連携などを行う場合、月額基本料は2倍以上になってしまいますので注意が必要です。
法律的な信頼感
GMOサインは、法律的な信頼感がすぐれていることが特徴の1つです。
GMOサインなら「閲覧制限」や「権限管理」などが有料プランに標準装備されているのでガバナンス面でも安心です。
また、GMOサインは法的効力の高い当時者署名型(立会人型)の電子署名を利用することも可能です。
従来の丸印(実印)レベルの契約をしたい場合、当事者署名型を選択して、自社の電子署名を送信することができます。
また、GMOサインなら、契約相手は電子サイン、自分の方は電子署名というハイブリッド型の電子契約も、メール認証に手書きサインを加えることも可能です。
さらに、取引相手が電子証明書を保有していない場合でも、マイナンバーによる本人認証機能があるため、高い信頼性を持つ契約が締結できます。
当事者署名型の電子契約が行えるのはGMOサインの特徴の1つです。
しかし、当事者署名型の方が、必ずしも事業者署名型よりも法的に優位というわけではありません。
現時点では専門家によるさまざまな議論があり、今の段階ではどちらがいいとは言えないでしょう。
そこまでのリスクヘッジを考えなくてもいいという企業もあるかもしません。
とは言え、今後のセキュリティ面の脅威を考えるならば、GMOサインを導入する方が安心できるのではないでしょうか。
長期署名(認定タイムスタンプ)対応
長期署名は、電子署名の有効期限を示すもので、GMOサインはこれを実現しています。
電子契約とは言え、今後のセキュリティへの脅威を考えれば、有効期限を設ける必要性はあるかもしれません。
紙媒体の契約の有効期限は7年とされています。
しかし、GMOサインにより国指定の認定タイムスタンプを付与すれば、電子署名は10年以上有効です。
他社システムとの連携・カスタマイズ性
GMOサインのAPI自体はわかりやすいのですが、API連携がオプション扱いになっており、標準装備されていません。
APIの柔軟性の面から外部システムとの連携の弱さに対する苦言も口コミで見られます。
また、海外事業者や外国人社員向けの対応言語は4言語とあまり多い方ではありません。
ドキュサインとは
続いてドキュサインについて解説します。
ドキュサイン(DocuSign)は、DocuSign Inc.とドキュサイン・ジャパン株式会社が運営する電子契約サービスです。
料金
初期費用は不要で、月額基本料は1ユーザーにつき2,737円です。
30日間トライアルという無料プランもあります。
また、電子署名利用料もかかりません。
課金方法が異なるため、他社と単純に比較はできません。
しかし、想定される契約数に応じたバルク料金で契約する方式のため、契約数が多い企業の場合は当然割安になります。
法律的な信頼感
電子帳簿保存法の要件を満たしていないドキュサイン単体では、税務対応できる契約書とはみなされていません。
また、ドキュサインは、法的効力の高い当事者署名型の電子署名にも対応していません。
ただし、他のシステムを併用することでカバーすることは可能です。
長期署名対応
ドキュサインは認定タイムスタンプを付与しないため長期署名という点ではやや安心感に欠けるようです。
ドキュサインの公式サポートサイトには、長期署名にも対応していると一応記載されていますが、実質的に対応できるのかは不明です。
他社システムとの連携・カスタマイズ性
連携の柔軟性もカスタマイズ性もともに定評があります。
連携システム数も十分にありますし、APIの柔軟性は抜群です。
ただし、APIのわかりやすさには少し難があるようです。
海外との取引がある企業では多言語に対応したサービスを選ぶのがいいのですが、ドキュサインは40言語以上対応しており、圧倒的多数です。
GMOサインとドキュサインの違いを比較
ここまでGMOサインとドキュサインについて解説してきました。
この2つのサービスの電子契約サービスの違いについて比較してみることとします。
他社システムとの連携
自社システムと他社システムとの連携を推進したい場合は、ドキュサインがおすすめです。
後発であるGMOサインは他社システムとの連携に少々難があり、まだまだこれからという感じです。
一方、先発のドキュサインの方は、世界中からの要望もあり、連携しているシステムの多さのみならず、APIに柔軟性があるので、連携できるアプリケーションやソフトが圧倒的多数です。
反面、APIそのものは大変複雑で、しかも仕様書は英語で書かれているので、エンジニアの対応力にかかっていると言えます。
システムを導入して、業務フローの効率化を図るのが理想ですが、中にはどうしても変えられない業務フローもあるでしょう。
そのような業務フローに電子契約の機能を合わせたい場合は、ドキュサインの方が円滑に対応できると思われます。
海外との取引が多い企業
海外での知名度の高いドキュサインの方が、海外との取引が多い企業にはおすすめです。
2022年8月現在の導入実績※を比較してみると、「GMOサイン」が国内40万社以上で、「ドキュサイン」が海外100万社以上となっています。
現時点では、導入実績があるドキュサインの方が、それだけノウハウの蓄積があるということになり、適切なサポートを受けることができる可能性が高いようです。
法的リスクへの対応
厳格な法的リスクに対処する場合は、GMOサインの方がおすすめです。
今後、電子契約が増えていくことを考えると、政府もセキュリティに関して、法的な要求が強化されることが予想されます。
GMOサインは、「閲覧制限」や「権限管理」などが有料プランに標準装備されています。
また、法的効力の高い当時者署名型(立会人型)の電子署名を利用することも可能です。
さらに、電子署名の有効期限を示す長期署名を実現していますし、マイナンバーによる本人認証機能もあります。
セキュリティ面でより優れているGMOサインの方が、今後の法的リスクや法制度への対応に対する供えとしては安心できるでしょう。
まとめ
GMOサインとドキュサインという電子契約大手2社の比較を中心に解説してきました。
それぞれ、長所・短所がありますが、電子契約の機能に関しては両者とも大きな差はないのが実情です。
電子契約導入のポイントとしては、自社がどれだけのレベルのものを求めるのか、自社でどういったことを実現したいのかを明確に描くことでしょう。
そのうえで両者を比較検討するのがベストな方法ではないでしょうか。
また、導入にあたってハードルとなるのが社内・社外調整です。
電子契約を導入するためには、社内の業務フローを見直す必要があります。
これまで紙契約や印鑑、署名に慣れていた社員は、少なからず電子契約に抵抗感を覚えるでしょう。
社内のみならず、社外の関係者に対しても調整を進めなければなりません。
いかにメリットのある電子契約でも、社内・社外調整は大きな壁になります。
電子契約導入後の運用体制も考え、関係部署を巻き込んでしっかり議論をすすめておくようにしましょう。