電子印鑑(デジタル印)を作成すると、インターネット上の電子文書に直接捺印できます。ペーパーレス化による経費削減や業務の効率化に効果的というメリットもあり、近年、電子印鑑を導入する企業が増えています。利便性の向上を目的に電子印鑑を導入するには、メリットだけでなくリスクもあわせて知っておくことが大切です。
本記事では、電子印鑑の導入前に知っておきたい法的効力やリスクといった基本的な知識を紹介します。
目次
電子印鑑とは?
電子印鑑とは、パソコンやタブレット、スマートフォンといったデジタルデバイス上で書類に捺印できるシステムをいいます。もちろん、PDFやExcel、Wordで作成した文書にも押印可能です。
社内での利用なら事務処理や確認作業の効率化が図れるうえに、法的効力やセキュリティが強固な電子印鑑であれば社外の契約でも便利でしょう。
ここでは、電子印鑑とはどのようなものなのかを詳しく紹介します。
電子印鑑が普及した実情
電子印鑑が急速に普及した理由の1つは、近年IT化とDX推進が急速に活発化したことです。電子印鑑は電子契約とともに普及してきています。
ドキュサイン・ジャパン株式会社の調査によると、日本国内での電子契約及び電子署名サービスの全体利用率は2022年時点で71%(企業は29%)です。2021年の同調査では37%でした。よって、1年ほどで電子契約及び電子署名が急速に普及したことが表されています。
参考:電子契約/電子署名の利用率は1年で約2倍に ― ドキュサインが「電子署名レポート2022」を公開
実際、コロナ禍によるリモートワークの導入や業務効率化を目的にチャットツールなどのデジタルツールを導入する企業が増加しました。非対面で書類のやりとりをする際に、電子印鑑の利便性を感じた方は多いのではないでしょうか。
電子上で書類を確認したことを示せる電子印鑑は、IT化とDX化の両方で役立ちます。リモートワークで離れた場所に居ても電子上で押印できるうえに、印刷の手間が省けて経費削減や業務の効率化を図ることもできます。
電子署名と電子印鑑の違いは何?
電子契約を利用すると、従来書面で行っていた手続きが電子上で完結します。対面でなくても、パソコンやタブレット、スマートフォンなどで契約の取り交わしが可能です。
電子契約で契約を交わす際には電子署名または電子印鑑、電子サインのいずれかが用いられます。電子署名は、本人性や確実性を担保するシステムです。電子印鑑は印鑑そのもののデータを表しますが、なかには電子署名機能を付加できる電子印鑑もあります。
また、電子印鑑は、大きく分けて法的効力が強いものとそうでないものの2種類が存在するため、使用用途に応じて選ぶのが重要です。ただし、法的効力の強い電子印鑑を作成するには、電子署名機能が付加されているものでなければいけません。
電子署名機能が備わっていないような、たとえば無料の電子印鑑は、セキュリティ面での信頼性が高くありませんが、非常に簡単に作成できる手軽さから社内での認印としての利用には向いています。
電子印鑑のメリット
電子印鑑の導入は、利便性の向上に効果的です。具体的にどのようなメリットがあるのかを紹介します。
業務の効率化
通常の印鑑の場合であれば、書類の作成から印刷して押印をもらう流れになります。書類に人が押印するのは、確実ではあるものの、手間と時間がかかるのがデメリットです。
押印が必要な人物が不在の場合、書類の保管や話の保留が必要になります。社外の人物が関わるプロジェクトであれば、話そのものが滞ってしまうケースもありうるでしょう。
電子印鑑を導入すると、電子上のやりとりのみでスムーズに押印まで完結します。非対面で完結できるのが大きなメリットです。押印が必要な人物が外出していたとしても、外出先からスマートフォンやタブレットで押印することができ、また、契約相手が遠く離れている場合にも契約締結ができます。
ペーパーレス化の促進
書類の種類によっては、押印に失敗すると紙が無駄になる場合もあるでしょう。電子印鑑であれば、そのような心配は不要です。
ランニングコスト面では、紙代やインク代の節約にも繋がります。
紙の値段や郵送料は年々増加していますので、電子印鑑の導入は経費削減にも効果的です。さらに、書類の保管場所にも気を遣わなくて済みます。データ上の保管であれば、日付や目的などの使い勝手に応じた管理が可能です。
業務に電子印鑑をはじめとするITツールを導入すると、経費削減だけでなく業務効率化も図ることができますので、検討する価値はあるでしょう。
電子印鑑のリスク
電子上で書類に押印できる電子印鑑には、押印した相手が見えないことによるリスクがあります。電子印鑑のメリットを最大限に活かすには、リスクの把握も大切です。
相手方が電子印鑑に対応しているかどうか
引用元:電子契約/電子署名の利用率は1年で約2倍に ― ドキュサインが「電子署名レポート2022」を公開
相手方が電子書類を導入していない企業の場合、電子印鑑による契約ができません。電子印鑑や電子書類は急速に普及していますが、実際のところ、書類の電子化をしていない企業も多いです。
事務処理の効率化やリモートワークの導入に便利な電子印鑑ですが、業種によっては導入が難しい場合もあります。
電子印鑑の利用範囲が自社内だけでなく、相手方の企業がいる場合には注意しましょう。
使用用途に見合ったセキュリティが必要
電子印鑑の使用で気をつけたいのは、使用用途に見合ったセキュリティです。電子印鑑は作り方によって、無料で作れるものと有料のものの2種類に分けることができます。
無料で作れる電子印鑑は手軽ですが、模倣が容易なのがデメリットです。有料の電子印鑑は本人性を高めるためにタイムスタンプ機能や印鑑作成者に関する情報が組み込まれています。
そのため、無料の電子印鑑は認印に限定した利用が安心です。実印に近い信頼性を備えて利用したい場合には、セキュリティ面で信頼のおける電子契約サービスを利用した電子印鑑にしましょう。
有料の電子印鑑はコストがかかる
電子印鑑のセキュリティ面を強固にしようとすると、コストがかかります。費用は利用するサービスや利用するソフトなどによりますが、価格帯は様々です。
電子契約サービスを利用したうえで電子印鑑を導入するのであれば、サービス利用料は月額のランニングコストとして考慮する必要があります。電子印鑑の導入費用分の役割を果たせるのかどうか、使用シーンに見合うセキュリティかどうかを想定して選ぶことが大切です。
「導入しても活用できるか不安…」、そのような場合には、無料で試せる電子契約サービスを利用してみましょう。
GMOサインやシヤチハタクラウドといった有名な電子印鑑サービス・電子契約サービスでは、無料トライアル期間が設けられています。気になる方はお試しください。
電子印鑑の種類
電子印鑑は、無料または有料の2種類に分けられます。どちらかが一方的に優れているわけではありません。無料と有料の大きな違いは、法的効力です。
ここでは、それぞれどのような電子印鑑なのかを詳しく解説します。
認印として利用しやすい無料電子印鑑
無料の電子印鑑は、パソコン上の文字をそのまま用いたり、実在する印鑑の印影の画像を使用したりすることで作成します。画像の透過ができるのであれば、自身での作成も可能です。またフリーソフトを利用すればより凝った見た目の電子印鑑も作成できます。
しかし無料の電子印鑑だと、法的効力はありません。模倣が容易なうえに、セキュリティ面では脆弱なためです。
パソコン上の文字を電子印鑑にした時はもちろんですが、ソフトを利用した場合も無料であれば模倣によるなりすましや悪用は完全には避けられないでしょう。このような点から、無料の電子印鑑は、認印での利用が安心です。
印影に所有者情報が入った有料の電子印鑑
電子契約サービスを利用した有料の電子印鑑には、所有者情報やタイムスタンプといった情報が組み込まれます。サービスによっては押印履歴が残る電子印鑑もあり、懸念点やセキュリティに対する考え方も踏まえて選択可能です。つまり有料であれば、基本的には模倣が容易ではありません。
しかし、社外の契約や公的手続きに利用するなど、電子印鑑に実印に近い法的効力を求めるのであれば電子契約サービスの電子署名機能の利用が必要です。電子契約サービスでは、認証機関によってセキュリティが確保されたデジタル上で電子署名が行えます。
有料の電子印鑑だとしても、厳密には法的効力を備えていない場合もありますので、気をつけるようにしてください。
\ 実印タイプ (当事者型 電子署名) の電子署名機能が利用可能 /
法的効力を持つ電子印鑑とは
法的効力を持つ電子印鑑は、電子契約サービスの利用で作成できます。電子上の契約が法的効力を備えるためには、一定の条件が必要となります。
電子契約の有効性は4段階のレベルで定められており、印鑑証明付きの実印に近い法的効力を電子印鑑に持たせるには「当事者署名型で認定認証(準ずるものを含む)された2条署名」(秘密鍵が適正に管理されたもの)を付した電子契約(「電子契約の有効性について」参照)であることが必要です。
そのため、本人性の証明が適正に行われる電子上で契約を交わすことになります。実印に近い法的効力を持つ電子印鑑の作成は、電子契約サービスを利用しましょう。
法的効力を持つ電子印鑑が作成できる代表的な電子契約サービスには、GMOサイン、シヤチハタクラウドなどがあります。
電子印鑑の作り方
電子印鑑の作り方は、目的によってさまざまです。認印だけの利用ですぐに作りたい場合から法的効力を持たせたい場合など、使用用途に応じて作り方をお選びください。
無料で電子印鑑を作る方法
無料で電子印鑑を作る場合、「自身で1から作成する」もしくは「アプリやフリーソフトを利用する」という2つの方法があります。
自身で1から作成するには、実在する印鑑の印影を画像データに取り込んで背景を透過させて完成です。より手軽さを追求するなら、WordやExcelといったソフトで好きなフォントを選びパソコン上で入力して円で囲う方法もあります。
無料で電子印鑑作成できるアプリまたはフリーソフトは、以下の通りです。
・クリップスタンプ
・印鑑透過
・電子三文判
・電子印鑑(App Store / Google Play)
クリップスタンプ・印鑑透過・電子三文判は、フリーソフトとしてパソコンにダウンロードして利用できます。
電子印鑑は、iPhoneまたはAndroidといったスマートフォンにダウンロードして電子印鑑が作成できるアプリです。手軽ですが、フォントや印鑑の形なども細やかに指定できます。
ダウンロードせずにブラウザ上で電子印鑑を作成する場合は「はんこ作成Web」がおすすめです。制限文字数は4文字までですが、迅速に作れます。
無料の電子印鑑は、ソフトやアプリ、専用サイトを利用すればとても簡単です。社内での確認業務などの印鑑としての重要性が低いシーンでご利用ください。
有料で電子印鑑を作る方法
電子印鑑を有料で作る場合の方法は、「電子印鑑作成ソフトを利用する」か「電子契約サービスの電子署名オプション機能の電子印鑑を利用する」のどちらかになります。
電子印鑑作成ソフトを利用する
代表的な有料の電子印鑑作成ソフトと料金は、以下の通りです。
・とろろこんぶ電子印鑑:68,000円(税込)~
・おまかせ電子印鑑2:14,000円(税込)
※アップデートは別途追加料金がかかります。
とろろこんぶ電子印鑑は、押印時にパスワードが求められます。さらに、押印履歴が残ります。万一の不正利用があった際にも気付きやすいでしょう。
おまかせ電子印鑑2は、デザイン性に優れた電子印鑑が作成できます。加えて、電子署名付き電子印鑑の作成・押印が可能です。
電子契約サービスの電子署名オプション機能の電子印鑑を利用する
続いて、電子契約サービスの電子印鑑を紹介します。
・GMOサイン:月額9,680円(税込)
・シヤチハタクラウド:月額110円~
GMOサインは「契約印&実印プラン」で回数無制限で利用可能です。メール認証と電子証明書による認証には追加料金がかかりますが、業務の効率化や脱ハンコを目指す企業に使いやすいプランとなっています。
シヤチハタクラウドは、これまで使用していた印鑑をそのまま利用できるのが特徴です。もちろん、セキュリティ面も重視されています。これまでの印鑑をそのまま使い続けたい場合におすすめです。
法的効力の強い電子印鑑の作成にはGMOサインがおすすめ
本記事では、電子印鑑の導入前に知っておきたい基本的な知識を紹介しました。電子印鑑の導入で重要なのは「法的効力やセキュリティ面が使用用途に合っているかどうか」です。
電子印鑑の活用は電子上のやりとりをスムーズにできますが、非対面でも捺印できる性質がメリットにもデメリットにもなりえます。無料で簡単に作れる電子印鑑は、社内の認印などに限定して利用しましょう。
そして、法的効力の強い電子印鑑をお求めの場合には、GMOサインが汎用性の高さでおすすめです。電子契約サービスとしても利便性が高いことから、多くの企業が採用しています。法的効力のある電子印鑑を求めるうえで迷った場合には、参考にしてみてください。