トラブルになったけれど、和解が成立したから示談書を作成したい
と思ったとき、どのように作成したらいいかわからない人もいるかもしれません。
示談書は、和解内容を記したものです。
人生において頻繁に目にするものではありません。だからこそ、初めて示談書を作成する場合は、どのように書けばいいかで困ってしまうでしょう。
この記事では、示談書の概要と作成時に使えるケース別のテンプレートを紹介します。示談書を作成する際の注意点も解説するので、作成する予定がある方はぜひ参考にしてください。
目次
示談書とは?
示談書という言葉を耳にしたことはあるけれど、内容や書き方がよくわからない
という方も多いのではないでしょうか。
和解した場合は必ず示談書を作成すべきなのか、公正証書とはどんな違いがあるのかなど、気になる点も出てくるかと思います。
ここでは、示談書の内容と書面が持つ効力、公正証書との違いを解説します。
和解内容を記した書類
示談書とは、トラブルになった当事者が話し合って成立した和解内容を記した書面です。
他人とトラブルになった際、裁判を通さずに当事者間で補償内容を話し合い、和解するケースも多々あります。これを示談といい、法律上では和解契約に分類されます。
示談書はさまざまなケースで作成されます。ケース別に記載事項も異なるため、すべての示談書の内容が同じとは限りません。例として、交通事故の際に作られる示談書の記載事項を見てみましょう。
- 交通事故の内容
- 双方の過失割合
- 双方の損害額
- 双方が補償する内容
示談書は上記の項目を詳しく記載する必要があります。特に、過失割合や補償する内容に不備があると、のちのち新たなトラブルになる恐れがあるため、注意が必要です。
示談書が持つ効力
示談書は和解契約に分類される書面なので、法的効力があると考えておきましょう。当事者間で和解が成立し、トラブルが解決したとしても、その後の補償が確実に履行されるとは言い切れません。
相手が補償に対応しない場合は、和解契約を破ったとして、裁判を起こすことが可能です。その際に法的効力を持つ示談書を証拠として提示すれば、有利に裁判を進められます。
示談書と公正証書の違い
和解成立時に作成される示談書と公正証書の大きな違いは、書面だけで強制執行ができるかどうかです。
示談書は法的効力があるため、裁判で証拠として提出すれば、有利になります。判決で勝訴すれば、相手に補償させることも可能です。
公正証書は、裁判を通さず強制執行の申し立てができます。ただし、申し立てができるのは、書面に「補償をしなかった場合に強制執行をされても異議は唱えない」といった文章がある場合のみです。文章がなければ強制執行ができないため、作成する場合は必ず記載しましょう。
強制執行以外の2つの違いは以下の通りです。
| 書式 | 作成の手続き |
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示談書 | 当事者それぞれの署名捺印があれば、特に決まりはなし | 当事者のどちらか、または保険会社が作成 |
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公正証書 | 公正証法に基づき作成 | 当事者双方が公証役場に出向き、本人確認や書面の確認をしなければならない |
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公正証書は示談書に比べて書式や作成の手続きが厳しいものの、約束が守られないときにはすぐに強制執行の申し立てができるメリットがあります。示談書があれば有利に裁判を進められますが、判決が出るまでに時間がかかるため、手間なく補償内容を履行させるなら、公正証書を作っておいたほうがいいでしょう。
【ケース別】示談書の作成に活用できるテンプレート
示談書は書式が特に定められていないため、当事者それぞれが自由に作成できます。自由とはいっても、どのように作成すればいいか迷うケースもでてくるでしょう。お困りの場合は、テンプレートを活用することがおすすめです。
ここでは、ケース別の示談書テンプレートを紹介します。
交通事故の示談書テンプレート
交通事故を起こした際に示談書を作成する場合は、以下のテンプレートを活用しましょう。
①事故の事実を記載します。
・事故日時
・事故場所
・事故内容(追突、出会い頭に衝突など)
・所有者名、車のナンバー
②示談内容と支払方法、支払金額を記載します。
支払方法には、互いに自分の支払額を相手側に支払う方法と、支払額を相殺して支払う方法があります。
引用元:交通事故示談書の書き方・雛型(例文)|自動車保険はソニー損保
交通事故の示談書には、事故内容だけでなく、事故発生日時を正確に記入しなければなりません。のちのちトラブルになりやすい示談条件や相手に支払う金額、支払い方法についても詳しく書いておきましょう。
傷害・暴行の示談書テンプレート
他者への傷害や暴行を示談する際は、以下のテンプレートを活用しましょう。
引用元:(傷害事件)示談書テンプレート| 弁護士法人若井綜合法律事務所
テンプレートに記載されている通り、傷害の内容や治療期間を記載する必要があります。被害側が治療を受けている場合は、医師に治療期間を確認するよう伝えましょう。傷害の内容については、双方でしっかりと確認したうえで記載することが大切です。
傷害事件はケース別に内容や発生日時、治療期間などが異なるため、テンプレートをそのまま使わないようにしましょう。今回のケースにあわせて内容を変更し、相手に提出してください。
不倫の示談書テンプレート
不倫による示談をする際は、以下のテンプレートを活用しましょう。
示談合意書
甲(○○○○(浮気をされた者の名前))と乙(○○○○浮気相手の名前)は、甲の配偶者丙と乙との間の20○○年〇月頃から20○○年〇月頃までの間の不貞行為(以下、本件「不貞行為」という。)に関し、次のとおり合意した。
記
第1条 乙は、甲に対し、本件不貞行為があったことを認める。
第2条 乙は、甲に対し、慰謝料として金100万円を支払う義務があることを認める。
第3条 乙は、前条の金員を20〇〇年○月〇日までに、○○銀行○○支店の甲名義の普通預金口座(口座番号○○○○○○○)に振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。
第4条 乙は、丙に対する求償権を放棄する。
第5条 乙は、直接あるいは通信手段を用いるとを問わず、今後、丙に接触しないことを約束する。
第6条 乙は、前条の義務に違反した場合、違約金として1回あたり、金10万円を甲に支払うことを約束する。
第7条 乙は、本件不貞行為に関し、みだりに口外(通信手段を用いた情報の公開を含む)しないことを約束する。
第8条 甲と乙は、甲乙間において、本書に定める者のほか、何らの債権債務関係がないことを相互に確認する。
本示談成立の証として、本示談合意書を2部作成し、各自1通を保持する。
20○○年 月 日
引用元:不貞の慰謝料の示談書や誓約書の文例・テンプレート│離婚:ひびき法律事務所
不倫の示談には、自身の本名はもちろん、相手の本名も必須です。相手の本人確認書類をチェックしたうえで名前を記載し、署名捺印をしてもらいましょう。また、示談書には不倫していた期間も記載しなければなりません。明確な日時がわからない場合は、専門家に相談したうえで記入することがおすすめです。
慰謝料の金額や支払い方法についても記載されているので、テンプレートをそのまま使わず、必要なところを変更してください。
示談書の取り交わし方は?
示談書を取り交わすときは、対面・郵送・Eメール・電子契約のいずれかの方法を利用します。示談書は双方が確認して署名捺印をすればいいわけではありません。本人確認を済ませたうえで署名捺印をしないと、のちのち当事者から「署名していない」と主張される可能性もあるため、注意が必要です。
取り交わし方別の本人確認方法は以下の通りです。
- 対面:運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を持参する
- 郵送:双方の印鑑登録証明書を用意する
- Eメール:印鑑登録証明書や運転免許証・マイナンバーカードなどの書類を添付してもらう
- 電子契約:それぞれが電子証明書を取得したうえで電子署名をする
4つの方法のどれを利用すべきか、詳しく解説します。
電子契約か対面での取り交わしが望ましい
示談書を取り交わす際におすすめなのが、電子契約、または対面です。
電子契約は双方の電子証明書が必要な当事者型と、メールアドレス認証で署名できる立会型の2つがあります。当事者型は厳正な本人確認を経て発行される電子証明書が必要なので、示談書を取り交わす際は当事者型を選びましょう。
参考:立会人型と当事者型の電子契約(署名)の違いは?それぞれのメリットと選ぶポイント|両方の署名タイプが利用可能なGMOサインのハイブリット署名もご説明|電子印鑑GMOサイン
当事者同士が近くに住んでいれば、対面での取り交わしも可能です。トラブルになったとはいえ、相手の顔をはっきり覚えていない可能性もあるので、運転免許証やマイナンバーカードで互いに本人確認をしておきましょう。
Eメールはトラブルが予想されるので注意
書面のPDFを相手に送信するEメールだと、内容を改ざんされる可能性があるため、あまりおすすめできません。書面とは違い、PDFファイルはソフトさえあれば自由に内容を変更できてしまいます。
相手から返ってきたファイルが改ざんされていると、和解契約が進まず、示談が成立しなくなるため、できるだけEメールは避けましょう。
示談書を作成する際の注意点
自身で示談書を作成する際に気を付けておきたいポイントが、いくつかあります。ポイントを知らないまま作成すると、作り直しになる可能性があるので注意しましょう。ここでは、作成前に知っておきたい4つの注意点を解説します。
作成後に内容を変えられない
示談書は和解成立後に作成する書類なので、作成後に内容を変えられません。
当事者双方が示談書の内容を確認し、署名捺印することで双方が納得して作成された書類だと判断されます。署名捺印後に納得のいかない点が出てきても、一切変更できないと考えておきましょう。
のちのちのトラブルを防ぐためにも、署名捺印をする前に、示談書の内容を双方が熟読する必要があります。内容の隅々まで確認して、問題がないと判断できたら署名捺印をしましょう。
損害状況を把握した後に書類を作成する
双方が損をしないように、トラブルによる損害状況が明らかになってから示談を進めるようにしてください。トラブル直後に示談を進めると、その段階で明らかになっていない損害に対する補償が行われません。
たとえば、交通事故を起こした場合、数時間~数日経ってからむち打ちの症状が出るケースも多々あります。事故直後に示談書の取り交わしまで進めると、むち打ちへの補償が行われないため、自費で治療しなければなりません。
焦って和解せず、少し時間をおいてから和解交渉を始めましょう。
合意した金額の支払い方法を明確にする
和解交渉の際に、補償する金額やお金の支払い方法を決めておきましょう。示談書には双方が合意した金額と、支払われるお金の名目、支払い方法を記載しなければなりません。いずれも詳しく書いておかないと、後々トラブルになる恐れがあるため、明確にしておくことが大切です。
支払われるお金の名目は、慰謝料や賠償金、損害賠償金などが挙げられます。ケース別に名目が異なるため、わからない場合は司法書士や弁護士などに相談することがおすすめです。
支払い方法は一括払い・分割払いと、現金の手渡し・振り込みのどちらかを決める必要があります。支払う側と受け取る側の双方に都合があるため、和解交渉の際によく話し合いましょう。お互いが納得できる条件で決着がついてから、内容を示談書に記載します。
不明点があれば専門家に見てもらう
示談書の作成で不明点がある場合は自己判断せず、専門家に見てもらうことが重要です。前述したように、示談書は和解契約を締結した法的効力を持つ書面となります。法的効力のある書面は、一度作成するとのちのち内容変更ができないため、問題のない内容に仕上げる必要があります。
ケース別を利用する場合も、場合によってはテンプレートの内容のみだと不十分かもしれません。こちらが不利になる可能性もあるため、示談書を作成したら、署名捺印をする前に専門家にチェックしてもらいましょう。
示談書でよく寄せられる質問
示談書を作成するにあたって、気になることがいくつか出てくるかと思います。ここでは、示談書でよく寄せられる質問を紹介します。
示談書が無効になる場合もある?
作成後の示談書が無効になるケースもありますが、極めて限定的ですから、あまり心配する必要はありません。たとえば、記載した内容に明らかな誤りがあった場合は例外的に無効になります。しかし、すべてのケースにおいて無効になるわけではないので、作成した示談書が無駄になる可能性は低いでしょう。
こちらに不利な条件で無効になるケースを防ぐためにも、トラブルの内容や補償される金額などは誤りがないようにしなければなりません。トラブルの内容は時間が経過するとあいまいになるので、直後に内容をまとめ、双方で確認することが大切です。
金額は和解交渉の際に取り決めるため、双方で確認しながら示談書を作成しましょう。
示談書は自分で作ってもいい?
示談書は誰が作ってもいいので、当事者のどちらかが作成しましょう。
示談書は決められた書式がなく、テンプレートも展開されているので、法律の知識がなくても問題なく作れます。
ただし、内容に誤りがあると和解が難航するため、当事者間で話し合いながら示談書を作成することがおすすめです。
示談書を作成したら、内容に問題がないかを専門家に確認してもらいましょう。法律のプロである司法書士や弁護士に見てもらえば、安心して示談書を提示できます。
交通事故による示談の場合、間に入る損害保険会社が示談書を作成してくれるケースもあります。その場合は当事者双方が作成する手間を省けるため、保険会社にお任せしましょう。
示談書は何部必要?
示談書は当事者それぞれが保管する必要があるため、最低でも2部は用意しましょう。パソコンで作成した示談書を2部印刷する際は、割印をしておくことが大切です。割印をしておけば、当事者それぞれが同じ書類を保管していると確認できるため、内容の改ざんを防げます。
示談書の作成はプロの手を借りることが大切
示談書は、和解契約の一種にあたる、法的効力を持つ書面です。
和解条件が破られた際に裁判を起こしても、示談書を証拠として提出すれば、有利に進められるでしょう。
ただし、書面が粗雑だと、重要な場面で法的効力を発揮しない恐れもあります。示談書は誰が作成してもいいので、自分で作って相手と取り交わすケースも考えられます。粗雑な示談書だと証拠にならない可能性もあるため、できるだけ専門家に見てもらうことがおすすめです。
まずは自分で示談書を作成し、相手に見せる前に専門家にチェックしてもらいましょう。専門家の目から見て問題がなければ、相手に提出して、署名捺印をもらってください。
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