電子サインと電子署名、どちらも同じなのではと思っていませんか。実は、電子サインと電子署名が持つ意味は異なるため、電子契約においては両者の違いを正確に理解しておくことが大切です。
電子サインと電子署名の違いを理解することで、電子文書へのリテラシーが高まるだけでなく、将来、電子契約を導入する際にも学んだ知識を生かせることができます。コロナ禍もあって電子契約を導入する企業が増えつつある中、近い将来、電子契約はより身近な存在になるかと思います。
本記事では、電子サインと電子署名の違いを解説し、電子サインの種類、効力、作り方などを幅広くお伝えします。
本記事を読むことで、電子契約の全体像を把握することができ、取引先から電子契約の相談を受けた際にも焦らず対応できるようになります。今このタイミングで、電子サインと電子署名の違いを理解し、時代の流れに乗ってみてはいかがでしょうか。
目次
電子サインとは何?
電子サインとは、電子文書に契約者本人の意思を表示する行為全般を指します。例えば、電子契約書に自身の名前を記入したり、百貨店での会計で署名したりする場面で電子サインが使われます。
また、電子文書への記入だけでなく、メール認証、電話認証、指紋の生体認証なども電子サインに含まれます。
電子署名とは何?
電子署名とは電子上の契約書や文章に信頼性を付与するための署名で、本人が作成したものであること(本人性)及び、改ざんされたものでないこと(非改ざん性)を証明する役割を持っています。
紙の契約書では、署名・捺印により本人性と非改ざん性を証明していますが、電子署名では主に「公開鍵暗号方式」という暗号化の技術仕組みを用いて本人性と非改ざん性を証明しています。
この暗号技術により、本人性や非改ざん性を第三者機関である認証局が証明し、改ざんがあった場合には、検知できる仕組みになっています。
電子サインと電子署名の違い
電子サインと電子署名の概要をお伝えしましたが、まだ明確にわかっていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、理解しやすいよう段階的に内容を整理していきましょう。
電子サインと電子署名の違い
・「電子サイン」のカテゴリーに「電子署名」が含まれる
・電子サインは、普段の生活の身近なシーンで使われている
・電子サインの中でも、暗号化の技術を使った署名を電子署名という
日本人特有の微妙なニュアンスの違いはあるものの、「サイン」と「署名」の言葉が持つ意味は、ほとんど同じです。そのため、電子サインと電子署名の違いがはっきり分からない方もいるのではないでしょうか。
ここでは電子サインと電子署名の仕組みを理解し、両者の違いを明確にしていきましょう。
電子サインの種類
電子契約には主に「立会人型電子署名」と「当事者型電子署名」の2種類があります。電子契約サービス会社によって名称が異なるケースもありますが、本質はほとんど変わりません。以下の解説を読み、概要を押さえておきましょう。
参考:立会人型と当事者型の電子契約(署名)の違いは?それぞれのメリットと選ぶポイント|両方の署名タイプが利用可能なGMOサインのハイブリット署名もご説明 | GMOサイン
立会人型電子署名
電子契約サービス会社などの第三者が双方の契約者の間に入り、メール認証などを用いて契約者本人であることを保証する方法を「立会人型電子署名」といいます。
IDやパスワードを入力してSNSやGoogleアカウントにログインするように、電子契約サービス会社から送付される専用のURLにログインして本人性を担保します。
契約締結までの主な流れは、次の通りです。
契約締結までの主な流れ
STEP
契約書の作成者が、署名済みの契約書を電子契約サービス会社に送付
STEP
電子契約サービス会社は、契約書の相手方に契約書を送付
非常にシンプルで円滑に進められるのが特徴です。契約書の署名欄の作成も簡単で、難しい処理はなく、契約書の相手方に専用のURLを送付するだけで、迅速に契約を締結できるのが大きなメリットです。また、契約書の受信者が電子契約サービス会社を利用していない場合でも電子署名は可能で、これも評価できる点です。
ただ、契約者本人以外にアクセスされ、乗っ取りやなりすましなどの危険性も併せ持っているため、第三者の悪意によって被害を受けるリスクはゼロではありません。各電子契約サービス会社ではセキュリティの強化を図っており、気になる方は問い合わせをしてみてください。
当事者型電子署名
一方、双方の契約者の電子証明書により本人性と非改ざん性を保証する方法を「当事者型電子署名」といいます。
電子証明書は、認証局に申請し発行してもらう書類で、実印の印鑑登録証明書と同等の効力を持っています。電子証明書を発行している日本の認証局は約10程度で、限られた機関しか電子証明書を発行できません。役所でしか印鑑登録証明書を発行できないのと同じように、電子証明書も厳重に管理されています。
また、立会人型電子署名では、第三者のなりすましや乗っ取りの危険性が潜んでいますが、当事者型電子署名は、電子証明書により本人性が担保されているため、第三者による被害に遭う可能性は限りなく低いです。
もし当事者型電子署名で契約を結ぶ場合、通常、相手方も電子証明書を発行する必要があります。そのため、相手方の手間を増やしてしまうのではないかと心配される方もいるかと思いますが、電子契約サービス会社によっては「立会人型電子署名」の方法で対応する会社もあるため、相手に負担をかけず契約を進めることも可能です。
また紙の契約書では、「明日から部長が3日間出張で不在のため、今日中に印鑑を押してもらわないと!」と上司のスケジュールを踏まえながら仕事をされるも多いかと思います。当事者型電子署名に委任行為を反映させ、部長以外の課長でも電子契約書に署名できる仕組みを構築しておけば、急ぎの対応に振り回されることが減ります。電子署名を使うことで業務の効率化が図れます。
電子サインに法的効力はある?
電子署名は、主に電子証明書を用いて本人性と非改ざん性を担保するため、実印と同等の効力を持っていると解説しました。それでは、もう一方の電子サインにも同じような効力があるのでしょうか。
先に結論をお伝えすると、電子署名法で定められた条件を満たす電子サインであれば、法的効力を持ちます。条件をわかりやすく伝えると、やはり「本人性」と「非改ざん性」の保証を満たすかどうかです。
令和2年7月17日に総務省・法務省・経済産業省が公表した「電子署名法2条1項に関するQ&A」を読み解くと、電子証明書がない電子署名であっても、契約者本人の意思によることが明確であれば、契約の非改ざん性が担保されると解釈できます。
参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法2条1項に関するQ&A) (METI/経済産業省)
よって、「本人性」と「非改ざん性」を保証できるかがポイントになります。
実際、三井住友銀行では専用の端末を用いて、手書き電子サインの実用化を実施しています。福島県会津若松市においては、印鑑登録証明書や戸籍謄本などの証明書を申請する際、申請者にタブレットでサインをしてもらう方式を取り入れています。
民間企業や地方自治体も積極的に電子サインを導入するなど、電子サインの信頼度も向上してきていることがわかるかと思います。
電子サインを作る2つの方法
電子サインの作り方は次の2つです。
・Adobeで作成する
・電子契約サービスを利用する
Adobe Acrobat Signを使うことで、電子サイン(PDF)を作成できます。気になるセキュリティについては、文章を暗号化するデジタルID機能で高められています。さらにセキュリティを最大限まで高めたい方は、認証機関から取得するID機能が役立つでしょう。
Adobeの他、電子契約サービスを利用する方法もあります。高いセキュリティや電子サインの挿入方法など、初めての方でもすぐに利用できる環境が整っているため、初心者の方には電子契約サービスの利用をお薦めします。
わずらわしい手間を省きたい方は、電子契約サービスの利用が最善策かもしれません。
電子サイン、電子署名の効果的な利用シーン
この記事の冒頭で電子サインと電子署名の違いを解説しました。電子署名は暗号化技術を使った、高いセキュリティを持つ署名方法、電子サインはタブレットでのサインのように、高度な技術を使わず、簡単に本人性と非改ざん性を保証する署名方法です。
両者の違い踏まえ、業務上のどのような場面で電子サインと電子署名を使うのかをみていきましょう。
電子サインの利用場面
本人証明をスピーディーにできるのが電子サインの強みで、社内承認の場面などでも有効活用できるでしょう。
通常、社内承認を得るためには稟議書の提出から始まり、複数の上司の了承を得る必要があります。書面でこの流れを踏むと、部長や社長の最終決裁を得るまでに2~3週間も時間がかかってしまうこともあるのではないでしょうか。
複数人の承認が必要な社内書類に電子サインを導入すれば、最終決裁までのスピードに在来線と新幹線ほどの差が出るのではないでしょうか。稟議書を電子化できれば、承認を必要とする上司へのメールを一斉送信することができるだけでなく、電子サインで承認を得ることができるので、最終決裁までの時間は大幅に短縮されます。
また、顧客への配信メールにも電子サインは有効です。すでに三菱UFJ銀行や三井住友銀行では、金融犯罪の防止策として、利用者への配信メールに電子サインを導入しています。電子サインの活用により、銀行になりすました詐欺被害を防止する動きもあります。
電子署名の利用場面
電子署名は、電子証明書を使うことで、本人確認の性格さと法的証明力の高さが担保されています。
相手企業と電子契約を締結する際など、高度なセキュリティと証明力が必要な場合に有効な方法です。契約書には相手方との契約事項が明記されており、改ざんがあってはならない重要な書類です。そのため、印鑑証明書と同等の効力を持つ電子証明書に裏付けされた電子署名が有効な方法になります。
また、紙の契約書では収入印紙を貼らなければなりませんが、電子契約で契約を締結する場合は収入印紙は不要です。不正行為を防止する高いセキュリティと、強い証明力を備え、コストの削減にもつながる電子署名。
電子サインと電子署名の特徴をよく理解し、業務に有効活用することで、業務の効率化を図ることができます。
契約書は手間がかかる書類
紙の契約書を1通送付するために「小さな手間」をかけていませんか。署名捺印、印紙の貼り付け、送付書の作成、封筒への宛名書き、切手の貼り付け……。紙の契約書を郵送するまでに、これだけ多くの「小さな手間」がかかります。
これを電子契約書に変えるだけで、「小さな手間」を気にせず、スムーズに仕事を進めることが可能となります。変えることのできない業務も多くある一方で、電子契約の導入など変化が求められる業務形態も複数あります。皆さまに限らず、周囲の社員でもそう感じている方はいるはずです。
電子化が進んでいる昨今、紙の契約書に「小さな手間」をかけ、業務効率を低下させてはもったいありません。電子契約の導入で業務効率が上がれば、歓迎する社員の方も少なくないはずです。まだ電子契約を導入されていないようでしたら、一度、電子契約について周囲の方に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、電子サインと電子署名の違いを中心に説明してきましたが、改めて両者の重要な違いを振り返ります。
・電子サインと電子署名の違いは「本人確認の精度」と「法的証明力」で考える
・電子サインは、本人性と非改ざん性をスピーディーに保証できる
・電子署名は、暗号化や電子証明書など高度な技術を使って保証される
コロナ禍でテレワークが推進され、脱印鑑や契約の電子化に取り組み始めている企業が多くなりました。今後、取引先から電子契約を打診されることが増えるかもしれません。もし電子署名を求められても迅速に対応できるよう、電子サインと電子署名の違いを正確に把握しておくことは重要です。