工事請負契約書を作成する場合、収入印紙が必要な場合があることをご存知でしょうか。課税文書に該当する書面には、契約金額に応じた収入印紙を用意しなければなりません。しかし、なかには非課税文書に該当するものもあるため、課税と非課税の違いをしっかり把握することが大切です。
この記事では、どのような場合に工事請負契約書に収入印紙が必要なのかを紹介します。必要な印紙税額や印紙税の節税方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
工事請負契約書に収入印紙は必要?
工事を依頼するにあたって、請負契約書を作成したものの、
とお悩みになった経験はないでしょうか。
ここでは、工事請負契約書には収入印紙が必要なのか、必要な場合はどれくらいのお金がかかるのかを解説します。
請負契約書には収入印紙が必須
請負に関する契約書は課税文書に該当するため、収入印紙が必要です。たとえば、工事請負・物品加工注文請書・広告契約書・プロ野球選手の専属契約書などが請負に関する契約書に該当します。契約内容から、請負契約だと判断される場合は収入印紙が必要になるため、締結前に用意しましょう。
ただし、契約金額が10,000円未満の場合は印紙税がかかりません。基本的に、工事請負は高額の契約になるため10,000円を下回ることはあまりないでしょう。
契約金額と印紙税の要不要に関しては、工事請負に限らず、請負契約全般に関する知識として押さえておくことがおすすめです。
リフォーム工事請負契約書にも収入印紙を貼り付ける
大規模な工事だけでなく、住宅の一部をリフォームする小規模工事においても、収入印紙が必要です。リフォーム工事は安ければ数万円の契約金額で済むため、収入印紙の費用も安くなるでしょう。しかし、印紙代を節約するために、契約書なしでリフォーム工事を実施する業者もいます。
しかし、工事請負における契約書に関しては、建設業法第19条で交付が義務付けられています。工事内容や契約金額などを記載した書類に署名捺印をして、工事業者・依頼者相互に交付する必要があるため、契約書なしの工事は違反になると覚えてきましょう。
工事請負契約書に必要な収入印紙の金額
現在、建設工事請負契約書についての印紙税は、租税特別措置法により税率が引き下げられています。ほかの請負契約に比べ、印紙税額が安くなっているため、通常の印紙税と間違わないよう注意しましょう。
工事請負契約書に必要な印紙額は、契約金額に応じて異なります。契約金額別の印紙税額は以下の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
軽減措置の対象となる契約書に係る印紙税の税率
引用元:建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置|国税庁
契約金額が100万円以下の工事については、軽減措置の対象外です。通常の印紙税額である200円の収入印紙がかかるので、貼り忘れないようにしなければなりません。
工事請負契約書以外に収入印紙が必要な文書
工事請負契約書以外にも、収入印紙が必要な課税文書は数多くあります。ここでは、課税文書・非課税文書の判断の仕方と、課税文書の種類について解説します。
課税・非課税の判断方法
作成した書面の課税・非課税を判断するには、文書の内容をチェックしなければなりません。書面に記載されている文章を確認したうえで、課税文書に該当するとみなされれば、収入印紙を貼り付ける必要があります。
課税文書に該当するポイントは以下の通りです。
この3つのすべてに当てはまる文書は課税文書とみなされるので、まずは印紙税法別表第1を確認することが大切です。確認したうえで、当事者間において課税目的で作成された文書か、印紙税法第5条に規程される非課税文書に該当しないかをチェックしましょう。
印紙税法別表第1に掲げられる20の文書
印紙税法別表第1には、課税文書に該当する20種類の文書が記載されています。20種類の文書は以下の通りです。
- 不動産・鉱業権などの契約書や運送に関する契約書など
- 請負契約書
- 約束手形と為替手形
- 株券や出資証券など
- 合併契約書や吸収分割契約書など
- 定款
- 継続取引の基本となる契約書
- 預金証書や貯金証書
- 倉荷証券や複合運送証券など
- 保険証券
- 信用状
- 信託行為に関する契約書
- 債務の保証に関する契約書
- 金銭・有価証券の寄託に関する契約書
- 債務譲渡・債務引受けに関する契約書
- 配当金領収証や配当金振込通知書
- 売上代金にかかる金銭・有価証券の受取書
- 預金通帳や貯金通帳など
- 消費貸借通帳や請負通帳など
- 判取帳
参考:印紙税額一覧表|国税庁
課税文書とみなされる文書は数多くあるため、作成した書類が該当しないかを確認しておきましょう。そして課税文書に該当する場合は、契約金額に応じた収入印紙を購入し、貼り付けます。
収入印紙を貼り忘れた場合、ペナルティを科される場合もあります。
収入印紙なしの工事請負契約書を使うとどうなる?
もし、工事請負契約書を作成した際に、収入印紙の貼り付けを忘れてしまったらどうなるのでしょうか。すぐに気づいた場合は問題なく済むものの、貼り忘れから一定期間が経過し、税務署から指摘された場合は過怠税が課されます。
ここでは、貼り忘れによる過怠税について解説します。
印紙税額3倍の過怠税が課される
課税文書の作成までに収入印紙を貼り付けなかった場合、印紙税額3倍の過怠税が課されます。納付すべき印紙税額と、その2倍の合計3倍の過怠税を支払わなければならないので、契約金額によっては高額の支払いとなります。
たとえば、契約金額250万円の工事請負契約書に収入印紙を貼り忘れると、500円×3=1,500円を支払わなければなりません。契約金額が小さければ大きな出費にはなりませんが、契約金額60億円の場合は48万円×3=144万円の支払いになるため、大きな痛手を負うことになります。
通常よりも高額の印紙代を支払うことになるので、貼り忘れないよう注意が必要です。
金額は状況に応じて異なる
過怠税の金額は、状況に応じて異なります。印紙税を払う人が管轄の税務署に出向き、3倍の過怠税を科せられる前に申告しておけば、印紙税額の1.1倍の支払いで済みます。たとえば、印紙税が500円の場合は550円、20万円の場合は22万円です。
早めに申し出ることでペナルティによる負担を抑えられるので、気付いたらすぐに税務署に足を運びましょう。
工事請負契約書の印紙税を節約する方法
工事請負契約書を作成する予定の方は、印紙税を節税する方法を押さえておきましょう。節税方法を把握した状態で収入印紙を購入すれば、通常よりも納税額を安くできます。ここでは、誰でも実践できる印紙税の節約方法を解説します。
契約金額を税抜きで記載する
契約金額によっては、税抜き表示によって印紙税額を抑えることが可能です。契約書に記載する契約金額は、税抜き・税込みのどちらでも構いません。消費税額が明確に記載されていれば形式は自由なので、金額に応じてどちらで記載するかを決めましょう。
たとえば、契約金額が490万円の場合、消費税込みの価格を記載すると539万円になります。500万円以下は印紙税額2,000円、500万円以上だと印紙税額10,000円に跳ね上がりますが、税抜き価格を記載すれば、8,000円を節約できます。
ただし、金額によっては節税効果を得られないので、その場合はほかの方法を試しましょう。
すべての契約内容を1つにまとめる
契約に関する書類を別々に用意するのではなく、1つにまとめることで節税効果を得られます。たとえば、契約金額が100万円以下であれば200円の印紙税額で済みますが、書類が複数ある場合は、複数枚分の収入印紙を用意しなければなりません。
1つの書類にまとめることで、1枚の収入印紙で済むため、トータルの印紙税額を大幅に下げられます。
契約書のコピーを使う
契約の当事者である一方が契約書の原本を保存する場合は、他方は契約書のコピーを保管すればよく、収入印紙の添付も不要です。収入印紙なしで契約を締結できるので、大きな節税効果を得られるでしょう。ただし、どちらが原本を保存するか(印紙税の負担をするか)の取り決めをしなくてはなりません。
一点注意したいのが、文書内に「原本とコピーの内容に相違がない」と記載されている場合です。原本とコピーに相違がないと書かれていると、コピーであっても課税文書とみなされるため、収入印紙を貼り付けなければなりません。
しかし、原本とコピーに相違がない旨が記載されていないと、取引先から不安視されるリスクもあり、信頼関係に影響を及ぼしかねません。ですから、このような方法で印紙税を節約することは、一概に良いとは言いきれないでしょう。
電子契約をする
リスクなく収入印紙の支払いを避けるなら、電子契約を導入することがおすすめです。
収入印紙は書面に貼り付けるものであるため、電子契約で使う電子ファイルには不要であると、国税庁も見解を出しています。つまり、電子契約であれば印紙税そのものを払わずに済むので、契約数が多い企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
収入印紙なしで工事請負契約書を作成するなら電子契約がおすすめ
印紙税を節約できること以外にも、書面契約から電子契約に切り替えることでさまざまなメリットを得られます。契約もスムーズに締結できるため、月間の契約数が多い企業に特におすすめです。
電子契約に移行する際にチェックしておきたいのが、電子契約サービスです。電子契約に必要な機能を数多くそろえているので、不慣れな企業でも、手軽に電子契約を締結できるでしょう。
ここでは、電子契約に欠かせない、電子契約サービスについて詳しく解説します。
電子契約サービスとは
電子契約サービスとは、電子契約に活用できる機能をそろえたサービスのことです。電子契約は書面契約と異なり、ネットワーク上で契約を締結します。対面や郵送で対応する必要がないため、遠方との取引も迅速に進むでしょう。
しかし、電子契約は便利な一方で、セキュリティ面や本人確認などの点に不安が残ります。そのため、電子契約サービスを選ぶ際には、2つの要素によって本人確認をする二要素認証や、万全のセキュリティ体制を整えているサービスを選ぶことが大切です。
電子契約のメリット
印紙税の節約以外で、書面契約から電子契約に切り替えることで得られるメリットは以下の通りです。
・インク代や印刷代などのコストをカットできる
・契約締結までの流れがスムーズ
書面契約の場合、パソコンで作成した書類を印刷し、取引先に提出しなければなりません。インク代や紙代がかかるだけでなく、遠方の場合は封筒代や郵送代もかかるので、契約数が多いほど月間のコストも大きくなるでしょう。
また、書面契約は契約締結までに時間がかかるデメリットもあります。対面契約であればスムーズに進むものの、取引先にアポを取り付けてからでないと会うことができないので、場合によっては契約が遅れるかもしれません。
電子契約を使えば、書面契約のデメリットを解消できます。パソコンで作成した文書を取引先に送り、相手が署名すればすぐに契約を締結することが可能です。文書を印刷せずに済むので、インクや紙、郵送代などのコストを大幅にカットできるでしょう。
電子契約サービスの選び方
電子契約サービスを選ぶときに確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 費用対効果が高いか
- 本人証明・内容改ざん防止機能が付いているか
- セキュリティ機能は万全か
現在、さまざまな電子契約サービスが各社から提供されていますが、サービスごとに機能は異なるため、使える機能をチェックすることが大切です。そのうえで利用料金を見て、費用対効果が高いかどうかを判断します。使用する機能に見合った価格が設定されていれば、自社に適したサービスだといえます。
機能をチェックする際には、本人証明・内容改ざん防止・セキュリティ機能も見ておきましょう。安全性を確保したうえで電子契約を行うためには、3つの機能は欠かせません。安全性が確保されていないサービスを選ぶと、契約内容が漏洩する恐れがあり、多大な損害を被ります。
取引先からの信用も失ってしまうため、信頼性の高い電子契約サービスを選びましょう。
費用対効果や安全性の高さを重視する方は電子印鑑GMOサインにお問い合わせください
工事請負契約書を作成する際は、収入印紙が必要です。小規模のリフォーム工事にも収入印紙が求められるため、金額に応じた収入印紙を用意しておきましょう。印紙税を節約したいのであれば、月間の契約数が多い方には電子契約への切り替えがおすすめです。電子契約に移行すれば、収入印紙代だけでなく、インク代や紙代などもカットできます。
電子契約サービスに費用対効果や安全性の高さを求める方は、電子印鑑GMOサインにご相談ください。
電子印鑑GMOサインでは、複数の本人証明に加え、内容改ざん防止機能であるタイムスタンプの付与と、操作ログの管理機能を用意しております。セキュリティ機能も備えているため、安全に電子契約を進めていただけます。
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