複数枚の契約書を作成する際には、割印が必要だとご存知でしょうか。また、
割印の存在を知ってはいるものの、どこに押せばいいかわからない
とお悩みではありませんか。
割印は、きちんと押されていなければ効果が得られないため、そのルールと押印の位置を正確に把握することが大切です。
この記事では、複数枚の契約書に必要な割印について詳しく解説します。割印と勘違いしやすい用語の説明や、割印に関してよく寄せられる質問に対しても回答するので、ぜひ参考にしてください。
目次
契約書に必要な割印とは?
自社と取引先で契約書を保管する、または複数の企業それぞれが契約書を保管する場合は、割印を押す必要があります。ここでは、なぜ割印を押す必要があるのか、どんな効果が得られるのかを解説します。
割印の目的は、書類の改ざんやコピーを防ぐこと
割印とは、複数の書類にまたがった位置に押印する方法です。
1つの印章が複数の書類に割れた形で押された状態になり、それぞれの書類を合わせると正しい印章となります。
割印の目的は、書類の改ざんやコピーを防ぐことです。契約時に書類内容が同じことを確認しても、後日確認すると一方の内容が変わっている恐れもあります。どちらが書類を改ざんしたかがわからないため、変更内容によっては大きなトラブルに発展するかもしれません。
しかし、契約時に複数枚の書類にまたがって割印を押しておけば、書類の改ざんはできません。割印があるものが原本だと判断できるため、双方がトラブルを避けられます。
また、割印を押した書類をコピーしても、印鑑そのものをコピーすることは難しいといえます。カラー印刷しても、印刷された状態と直に押された状態では見た目が異なるため、すぐに改ざんや複製に気付けるでしょう。
割印と似た用語を解説
割印のように、印という言葉が付く用語はいくつかあります。契約関係で知っておきたいものもあるため、ここで3つの用語と、割印との違いを解説しましょう。
消印の特徴
消印とは、契約書と印紙にまたがるように押すもので、印紙の再利用を防ぐ目的があります。契約書には第1~20号の課税文書と非課税文書に分かれ、課税文書は種類別に定められた印紙を貼り付けなければなりません。課税文書には以下の種類があります。
- 第1号文書:不動産や鉱業権、無体財産権などに関する契約書
- 第2号文書:請負契約書
- 第3号文書:約束手形・為替手形
- 第4号文書:株券や出資証券、特定目的信託などの受益証券
- 第5号文書:合併契約書や吸収分割契約書、新設分割契約書
- 第6号文書:定款
- 第7号文書:継続取引の基本となる契約書
- 第8号文書:預金証書や貯金証書
- 第9号文書:倉荷証券・船荷証券・複合運送証券
- 第10号文書:保険証券
- 第11号文書:信用状
- 第12号文書:信託行為に関する契約書
- 第13号文書:債務の保証に関する契約書
- 第14号文書:金銭や有価証券の寄託に関する契約書
- 第15号文書:債権譲渡や債務引き受けに関する契約書
- 第16号文書:配当金の領収証や配当金の振り込み通知書
- 第17号文書:売上代金にかかる金銭や有価証券の受取書・売上代金以外の金銭や有価証券の受取書
- 第18号文書:預金通帳や信託通帳など
- 第19号文書:消費賃借通帳や請負通帳など
- 第20号文書:判取帳
参考:印紙税額一覧表|国税庁
いずれかに該当する書類を作成する場合は、書面に印紙を貼り付ける必要があります。印紙税額は種類や契約金額に応じて変わるため、該当する書類の税額をチェックしておきましょう。
印紙が必要な契約書を用意するときは、必ず消印をすることが大切です。消印していない場合には、貼り付ける印紙と同額の過怠税を徴収されることになるため、忘れないようにしてください。
契印の特徴
契印とは、ページ間に印鑑を押すことで、ページの抜き取りや差し替えを防止する目的があります。契約内容に不利がある場合、不利な内容が記載されているページを抜き取れば、契約を有利に進められます。抜き取った証拠がなければどちらが契約書を変えたかがわからないため、トラブルになるでしょう。
契印を押しておけば、印鑑が不自然な形で残るので、抜き取りや差し替えにいち早く気づけます。抜き取り後の偶然の一致を避けるためにも、ページ毎に印鑑を押す位置を変えましょう。
契印と似た言葉に契約印というものもありますが、契約印は、契約時に使う印鑑のことです。契印とは意味がまったく異なります。
捨印の特徴
捨印とは、契約書の欄外に押すもので、訂正印をもらわずに修正や変更を行う目的があります。契約書内容に誤りがあった、または記入時に間違えてしまった場合は、相手から訂正印をもらわなければなりません。訂正印を押したうえで、二重線を引いて正しい内容を記載します。
訂正印は誤りがあるたびにもらう必要があるため、対面でないと修正や変更ができません。また、誤りが多いほど相手に手間をかけさせるので、取引先の心証を悪くしてしまうかもしれません。
捨印を押しておけば、訂正印をもらわずに内容を修正・変更できるため、相手に手間をかけさせずに済みます。対面でなくても、誤りを訂正して必要事項を記入できるため、契約もスムーズに進むでしょう。
ただし、捨印を押すと契約内容の変更を容易に行えるため、注意が必要です。自社側で捨印を押すと、取引先が契約内容を変更できるため、不利な内容になる恐れがあります。できるだけ誤りのないよう記入し、間違えてしまったときは訂正印を押してもらうことがおすすめです。
3つの用語と割印との違い
上記で解説した通り、割印と似た用語はいくつかあり、それぞれ意味が異なります。4つの用語の違いを以下の表にまとめました。
用語 | 意味・目的 |
---|
割印 | 複数の契約書にまたがって印鑑を押すこと。内容の改ざんや複製を防ぐ |
消印 | 契約書と印紙にまたがって印鑑を押すこと。印紙の再利用を防ぐ |
契印 | 複数ページある契約書のページ間に印鑑を押すこと。ページの差し替えや抜き取りを防ぐ |
捨印 | 契約書の欄外に印鑑を押すこと。訂正印をもらわずに、修正・変更を行える |
似た言葉ではあるものの、4つの意味や目的は大きく異なるため、間違えないよう注意しましょう。いずれも書面での契約時に使う用語なので、4つの用語とそれぞれの目的を覚えておくことがおすすめです。
割印のルールと押す場所
割印は契約書の改ざんや複製を防ぐ大切な役割を持っていますが、きちんと押しておかなければ効果を得られません。ここでは、割印をする際に知っておきたいルールと、印鑑を押す場所を解説します。
複数の契約書にまたがって押さなければならない
割印で最も重要なのは、複数の書類にまたがって印鑑を押すことです。2部以上の書類すべてに印鑑がきれいに付いている必要があるので、契約書の厚み別に、押し方を変えることが大切です。
1枚の契約書であれば、複数枚重ねても厚みがさほどないため、印鑑マットを敷いて押すだけできれいに残ります。しかし、複数ページのある契約書は厚みの関係できれいに残しにくいため、1ページ開いた状態の契約書を重ねて割印をしましょう。
割印を押す場所
割印を押す場所に正確な決まりはないので、各書類の空白スペース部分に押しましょう。契約書の上部に割印をする場合は、2枚の上部が見えるように重ね、割印をします。3枚以上ある場合もそれぞれの書類の上部が見えるように重ね、2枚ずつに割印をしましょう。
1枚目と2枚目・2枚目と3枚目といったふうに、それぞれに印鑑が押されていれば、すべての書類が同じだと証明できます。上部の空白スペースが狭い、または割印をする人数が多い場合は、文書横のスペースも活用しましょう。
きれいな割印の押し方は?
割印をきれいに押すときは、書類の重ね方だけでなく、印鑑マットを活用することも大切です。硬い机の上に書類を並べて印鑑を押しても、下の書類にうまくインクが付きません。しっかりインクを付けるために強く押すと、位置がずれる恐れもあるため、押し直しになる可能性もあります。
印鑑マットを敷いて押せば、複数枚の書類にきれいに印影が付きます。契約のたびに用意するのは面倒かもしれませんが、後々のトラブルを防ぐためにも、必ず用意しましょう。
契約書の割印でよく寄せられる質問
割印についての知識をさらに深めるために、ここでは、契約書の割印に関してよく寄せられる質問を紹介し、それに対して回答します。
割印の必要性とは?
割印は契約書の改ざんや複製を防ぐ大切な役割を持っているため、必要性が高いといえます。契約書に記載されている内容は、自社だけでなく、取引先にとっても重要な項目が多く記載されています。内容を改ざんされると、一方が利益を得て、もう一方が不利益を被るため、改ざんを防止することが大切です。
書面契約で内容の改ざんを防止するには、割印が有効です。内容の改ざん後に一方の割印を偽装できても、もう一方の割印は偽装できません。印影のずれや紛失によって改ざんに気付けるため、必ず割印をしておきましょう。
割印を失敗したときの対処法は?
割印に失敗してしまっても、大きなミスでなければそのままでも構いません。印影が少しずれてしまった、はっきりとわかるものの、インクが少し薄くなってしまった程度であれば、押し直す必要はないでしょう。ただし、以下の場合は押し直すことがおすすめです。
- 上の書類にははっきりとインクが付いたけれど、下の書類にはうっすらとしか付かなかった
- しっかりインクを付けるために印鑑を動かしてしまい、印影が確認できないほどずれてしまった
いずれかに該当する場合は、再度押印しましょう。硬い机の上だとインクが付きにくくなるため、印鑑マットを活用してください。
割印を忘れたらどうすればいい?
契約時に割印を忘れてしまっても、当事者双方の署名捺印があれば契約そのものに影響はありません。ただし、一方が書類内容を改ざんする可能性もあるため、取引先に問い合わせて、割印をすることがおすすめです。
割印をする際は、自社と取引先の双方が書類内容の確認をすることも大切です。一方が書類内容を変更している可能性もあるため、内容がまったく一緒であることを確認してから、割印をしましょう。
当事者双方の割印が必要?
当事者全員の押印が必要です。たとえば、A社とB社が取引をすることになり、A社のみが割印をしたとします。A社が書類内容を変更しても、変更後の書類にA社が割印をすれば、変更前の書類に偽造できてしまいます。
双方が割印を押しておけば、相手方の割印までは偽造できないので、互いに改ざんできません。不要なトラブルを避けるためにも、双方が割印をしておきましょう。
契約書の割印は書類の改ざんや複製を防ぐ目的がある
契約書の割印には、書類の改ざんや複製を防ぐ効果があるため、書面で契約を締結する際は、必ず実施することがおすすめです。割印をしておけば、互いに改ざんできないため、契約後のトラブルを未然に防げるでしょう。
割印は複数枚の書類にまたがって押すことが大切です。2部以上の書類に印影の上下があることで、同一の書類だと証明できるので、どちらか一方にのみ押さないよう注意しましょう。