契約書をやり取りする際、紙ではなくPDFファイルを使いたいと考えていませんか。これまで紙の契約書でやり取りをしていた方にとっては、PDFファイルで契約を締結できるのか、電子契約書には法的効力があるのかなど、気になる点がいくつも出てくるでしょう。
この記事では、契約書のやり取りはPDF形式でも有効かを解説します。紙の契約書を電子化するメリットと、電子化に最適なサービスも紹介するので、電子契約を検討している方はぜひご覧ください。
目次
PDF形式の契約書に効力はある?電子契約書の有効性について
これまで紙の契約書で契約を締結していた方は、PDF形式の契約書を交わすことに不安を感じているのではないでしょうか。電子契約書は従来のように押印ができないため、トラブルが起こった際に法的な証拠になるのかが気になるところです。
ここでは、PDF形式の契約書に効力はあるのかを紹介します。
PDF形式でも法的に問題はない
PDF形式の契約書にも法的効力があるため、契約締結は可能です。契約をする当事者間が内容に合意し、双方に権利・義務関係が生まれていれば、契約が成立したとみなされます。紙・PDFの契約書は、種類によって法律で一定の保管期間が定められていますが、おおよそ5年から10年です。たとえば、株式会社は会計帳簿閉鎖から10年間、その会計帳簿及び事務に関する重要資料を保管する義務が規定されています。トラブル時にも有力な証拠となりますから、締結後も保管しておきましょう。
(会計帳簿の作成及び保存)
第四百三十二条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
引用元:会社法 | e-Gov法令検索
電子契約書は記名押印ではなく電子署名で対応
電子契約書は記名押印ができないため、電子署名で本人の信頼性を確保します。紙の書類は本人直筆の署名と押印があるので、当事者本人の意思によって締結されたものかどうか判断が可能です。しかし、電子署名は契約書を閲覧できれば誰でも署名できるため、当事者本人が知らない間に契約が進んでしまうリスクもあるでしょう。
なりすましによる契約トラブルを防ぐために、電子契約書の送受信には公開鍵暗号方式が採用されています。公開鍵暗号方式とは、鍵を所有する人でなければ書類内容を閲覧できないものです。公開鍵暗号方式の流れを見てみましょう。
- 書類を受け取る側が秘密鍵と公開鍵を作成
- 書類作成者に公開鍵を送信
- 書類作成者が公開鍵を使って書類内容を暗号化
- 書類を受け取る側が秘密鍵を使って暗号化された文書を復元
公開鍵は書類内容を暗号化することができ、暗号化された文書は秘密鍵の所有者でなければ復元できません。鍵を持たない第三者が契約書の内容を確認できないので、安心して契約書のやり取りを行えます。
また、電子署名に関しても万全のセキュリティ体制を整えています。電子署名の際、認証局が発行する電子証明書があれば、当事者本人が署名をしたという高い信頼性を得ることが可能です。認証局では厳正な本人確認の審査が行われるので、第三者が誤って取得するリスクもありません。
電子署名は電子証明書なしでも行えますが、本人が署名したかどうかがわからないため、電子証明書を取得することがおすすめです。
紙の契約書をPDFにすることは可能?
電子契約の導入に伴い、これまでの紙の書類をまとめてPDF化したいと考える方も多いでしょう。紙の書類を電子化することで、書類の保管スペースを別の用途に活用できるため、省スペース化を検討している方におすすめです。
ここでは、紙の契約書をPDF化する方法について解説します。
スキャン機器を使えばPDF化できる
スキャン機器を使用すれば、紙の書類をPDF化することが可能です。スキャン機器には、スキャナーやスキャンアプリがあります。スキャナーがなくても、スマホにスキャンアプリをインストールすれば、すぐに紙の書類を電子化することが可能です。
スキャナ保存の要件を満たして保管する
紙の契約書を電子化する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を確認しておきましょう。電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿書類のデータ化を可能とする法律です。税務関係の帳簿書類のほか、電子取引でやり取りした契約書・請求書・見積書なども対象になります。
電子帳簿保存法は「電子取引データ保存」「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」の3つの区分に分かれており、紙の書類を電子化したい人がチェックすべきなのは、スキャナ保存の区分です。スキャナーを使って書類を保存する際に気を付けたい要件は以下の通りです。
2つの要件は、機器を使って保存する際に気を付けなければなりません。スキャン保存をした後は、以下の要件をチェックしましょう。
- 書類の作成・受領後おおむね7営業日以内にスキャナ保存をする、または企業の業務処理サイクルの期間経過後おおむね7営業日以内にスキャナ保存をする
- 上記の期間内に総務大臣が認証する業務にかかるタイムスタンプをスキャナデータに付与する
- スキャナデータの訂正・削除ができないシステムの利用、または訂正・削除の履歴を確認できるシステムを使う
- スキャナデータとデータに関連する書類の相互の関連性を確認できるようにする
- 14インチ以上のカラーディスプレイ・カラープリンター・操作説明書を備え付ける
- スキャナデータを速やかに出力できる環境を整える
- スキャナ保存をするシステムの概要書・仕様書・操作説明書・スキャナ保存の手順・担当部署が明記された書類を備え付ける
- スキャナデータの検索機能を確保する
参考:はじめませんか、書類のスキャナ保存|国税庁
スキャナ保存の要件は非常に多いため、洩れのないよう1つずつチェックしていきましょう。1番目の入力期間については、契約書や納品書、請求書などの重要書類のみ適用されます。見積書や注文書などの一般書類には適用されないので、過去の書類であれば入力期限を気にせず電子化することが可能です。
重要書類を電子化する場合は、地域を管轄する税務署への届出が必要になります。届出の提出が難しい場合は紙での保管、届け出を提出することができる場合は、届出提出後に電子化しましょう。
PDFの契約書を使う際に気を付けたい電子帳簿保存法とは
書面での契約から電子契約に切り替える際は、電子帳簿保存法について知っておく必要があります。電子契約書の保存方法や保存する期間などが定められているので、電子化への移行前に確認しておきましょう。
ここでは、電子帳簿保存法について詳しく解説します。
電子取引におけるデータの保管・管理要件を定めた法律
電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿書類のデータ保存を可能とする法律です。書面の契約書を電子契約書に代えられるため、社内のデジタル化を推進できます。電子帳簿保存法では、電子契約におけるデータの保存義務、保存方法などが詳しく定められているので、後ほど詳しく紹介します。
法人・個人事業主どちらも対応が必要
電子帳簿保存法は3つの区分に分かれており、電子契約サービスやメールを介して締結した契約データに関する電子取引は、法人・個人事業主どちらも対応が必要です。保存義務のある書類は以下の通りです。
電子契約サービスやメールなど、インターネットを介してやり取りしたデータは、電子帳簿保存法に則って保存する義務があります。相手から送られてきたデータだけでなく、自身が送ったデータも保存しなければならないので、誤って破棄しないよう注意しましょう。
電子化に切り替えたからといって、これまでの紙の書類を電子化する義務はありません。
PDFなどの電子契約書の保管で気を付けるべきポイント
電子帳簿保存法に則って電子データを保存する場合に気を付けたいポイントは以下の通りです。
電子データを取り扱い始める際は、上記の4つを満たす必要があります。検索機能と真実性を確保するポイントは以下の通りです。
保存要件 | 概要 | 対応方法例 |
---|
3.検索機能の確保 | ・「取引年月日」 ・「取引金額」 ・「取引先」 で検索できるようにする | 1.検索機能に対応した専用ソフトを使用する 2.ファイル名を「20221031_(株)国税商事_110000」等にしてデータを保存する 3.Excel等で索引簿を作成し、保存したファイルと関係づける |
4.真実性の担保 | 保存した電子データの真実性を担保できるようにする。 | A.タイムスタンプが付与された書類の受け取り B.データに速やかにタイムスタンプを付与する C.データの訂正・削除が記録されるまたは禁止されたシステムでデータを受け取って保存する D.不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用 |
引用元:どうすればいいの?「電子帳簿保存法」 | 経済産業省 中小企業庁
データにタイムスタンプを付与することで真実性を確保、ファイル名に契約内容を入力することで検索機能を確保できます。2つの要件を満たしたら、電子データを保管するサーバーを閲覧できるディスプレイを用意しましょう。
ディスプレイの近くには、データを作成する際に使用するソフトのマニュアルも備え付けておく必要があります。これらのすべての要件を満たせば、電子帳簿保存法に則ってデータを保管しているとみなされます。
契約書をPDF化するメリット・デメリット
書面の契約書をPDF化することで、保管スペースを削減するメリットが得られます。しかし、保管スペースを十分確保できる企業からすれば、特に大きなメリットは感じられないでしょう。
ここでは、契約書をPDF化することで得られるそのほかのメリットを詳しく解説します。あわせて、注意したいデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
PDF化のメリット
契約書をPDFすることで得られるメリットは以下の通りです。
- 契約書の管理が容易になる
- インクと紙の費用を削減できる
- 契約を迅速に締結できる
契約書をPDF化することで、保管スペースの削減だけでなく、管理も容易になります。書面で保管していると、どこに書類が保管されているかをわかりやすくするために、さまざまな工夫を施さなければなりません。書類数が多いほど管理も難しくなるでしょう。
契約書をPDF化すれば、関連するKWを入力するだけで該当する書類を検索できるようになりますし、管理も容易です。また、電子化に切り替える場合は、その後のインク・紙・郵送費用などの書面での契約締結にかかる費用をカットできます。
インターネットを通じて契約書を送付し、相手方が合意すれば、すぐに契約を締結することも可能です。急ぎの契約を調整次第で当日中に敵悦させることができるでしょう。
PDF化のデメリット
契約書をPDF化することでのデメリットは以下の通りです。
- 税務署への届出が必要
- 場合によっては原本を破棄できない
2021年12月31日以前の書類をPDF化する際は、事前に税務署長に届出を提出しなければなりません。電子帳簿保存法で届出の提出が義務付けられているので、過去の書類を電子化する際は、日付を確認したうえで届出を提出しましょう。
また、以下に該当する書類は紙の原本を残しておく必要があります。
- 入力期間を過ぎている
- 備え付けのプリンタの最大出力より大きい書類を読み取っている
- 定期的な検査で不備があった
- 参考:「Ⅰ 通則【制度の概要等】」|国税庁
参考:通則 【制度の概要等】|国税庁
いずれかに該当する場合、定期的な検査が終了するまでは紙の原本を残しておかなければなりません。電子化したからといって、すべてを破棄していいわけではないと考えておきましょう。
PDFの契約書のやり取りを検討するなら電子契約サービスを導入
契約書のPDF化を検討している方は、電子契約サービスの導入がおすすめです。電子契約サービスのなかには、スキャナ保存をした書類の管理機能を備えたところもあるため、手間なくすべての書類を保存・管理できるでしょう。
ここでは、電子契約に便利な電子契約サービスについて紹介します。
電子契約に必要な機能を備えたサービス
電子契約サービスとは、電子契約に必要な機能を備えたサービスです。サービスは多数展開されており、サービス別に搭載されている機能も異なります。また、料金プランによっては一部機能しか使えないサービスもあるため、費用対効果をチェックしたうえで、導入するサービスを決めることが大切です。
電子帳簿保存法に対応するサービスを選べば安心
電子契約サービスを選ぶときは、電子帳簿保存法に対応したサービスを選びましょう。電子帳簿保存法を準拠するサービスは、法律に則った機能をそろえているため、安心して使えます。法律について熟知していなくても、違反することなく電子契約を進められるので、かんたんに電子化へと移行できるでしょう。
紙の契約書が多い人はスキャン保存機能があるかチェック
紙の契約書が多くあり、まとめて電子化したいと考える方は、スキャン保存したデータをまとめて管理できる機能が付属しているかを確認することが大切です。スキャン保存に関する機能がなければ、スキャンデータは別で保存する必要があるため、管理に手間がかかります。
スキャン保存したデータをまとめてサービス上で管理できる機能があれば、電子取引でやり取りしたデータだけでなく、以前取引した書類も保存・管理できます。保存・管理の手間を省くことで、業務の効率化を図れるでしょう。
紙でやり取りした契約書のPDF化を検討する方は電子印鑑GMOサインにご相談ください
これまでにやり取りした紙の契約書をPDF化すれば、保管スペースの削減だけでなく、管理の手間も省けます。電子帳簿保存法を満たして保存する必要があるものの、得られるメリットは大きいでしょう。
PDF化した契約書をまとめて管理したいなら、電子印鑑GMOサインの導入をご検討ください。
GMOサインでは、スキャン文書管理機能を用意しております。スキャンデータの保存・管理だけでなく、スキャンしたデータにタイムスタンプを付与することもできるため、内容が改ざんされていないことを証明できます。
そのほかにも、電子契約に役立つさまざまな機能を用意しているので、電子契約サービスの導入を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。