コンサルティング契約書を作成したいけれど、書類に入れるべき項目がわからないとお悩みではありませんか。コンサルティング契約書は個人・法人問わず作成する機会があるため、作成方法を覚えておくことをおすすめします。あわせて作成時の注意点も把握しておけば、スムーズに契約書を作成できるでしょう。
本記事では、コンサルティング契約書の概要と作成方法を詳しく解説します。書類作成時に活用できるテンプレートと、気を付けておきたいポイントも紹介するので、作成前に確認しておきましょう。
目次
コンサルティング契約とは?
コンサルティング契約という言葉を耳にしたことはあるけれど、どんなものかわからないという方もいるでしょう。契約内容を詳しく把握することで、自身に必要かどうかを適切に判断することができるので、まずはコンサルティング契約について知ることが大切です。
ここではコンサルティング契約の内容と2つの種類、アドバイザリー契約との違いを解説します。
コンサルタント・委託者間で締結する契約
コンサルティング契約は、事業・経営へのコンサルタントを提供する旨が記載された、コンサルタント・委託者間で締結する契約です。事業・経営に詳しい人物が企業内にいたとしても、企業規模が大きくなってくれば、運営に行き詰まる可能性もあるかもしれません。経営分野の専門家である経営コンサルタントに企業の状況をチェックしてもらうことで、抱えている問題や解決方法を提示してもらうことが可能です。問題を解決したうえで、今後発生する可能性のあるリスクを防げば、経営も順調に進むでしょう。
近年、コンサルティング契約は経営不振に陥っている企業だけでなく、新規ビジネスを立ち上げる企業からのニーズも高まっています。
コンサルティング契約の2つの種類
コンサルティング契約は、準委任契約と請負契約の2種類に分かれます。業務内容に応じてどちらの種類を選ぶべきかが異なるため、2つの違いをしっかりと把握してください。
準委任契約
準委任契約とは、当事者の一方が法律行為でない事務を相手に委託し、もう一方が承諾することで締結するものです。企業に対し、コンサルタントがアドバイスのみ行う場合は、準委任契約を締結します。
請負契約
請負契約とは、当事者の一方が仕事を成功させると約束し、もう一方が仕事の成果に対して報酬を支払うと約束することで成立する契約です。コンサルタント側に、事業経営に関するなんらかの成果物の作成・提出を求める場合は、請負契約を締結します。
準委任契約と請負契約の違い
準委任契約と請負契約の違いは、成果物の有無です。コンサルタントに調査レポートや事業計画をまとめた書類などの成果物を求めるなら、請負契約を締結しなければなりません。準委任契約は成果物を求められないので、企業側にアドバイスのみ行う際に締結できます。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
(寄託)
第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
コンサルティング契約とアドバイザリー契約の違い
コンサルティング契約とアドバイザリー契約は、名称は異なるものの、すべきことは一緒です。どちらもコンサルティング業務を委託してきた企業に対して、経営や事業に関するアドバイスを行うことを目的としています。名称が異なるだけで内容は同じなので、どちらの名称の契約を選んだとしても、経営や事業に関するコンサルタントを受けることが可能です。
コンサルティング契約書を作る理由とは
コンサルティング契約書を作る理由は、双方の認識の違いから生まれるトラブルを防ぐことです。コンサルティング契約は、当事者間が合意していれば、口約束でも締結できます。口約束であれば契約書を作る手間を省けるため、スムーズにコンサルティングを受けられるでしょう。
ただし、契約書がなければ業務内容の詳細を確認できません。口頭で双方の主張を伝えていても、後々になって「言った」「言わない」と口論につながる恐れがあり、トラブルの原因になる可能性もあります。
双方の主張を確認したうえで契約書に記載しておけば、内容通りに業務が履行されるため、トラブルになることもないでしょう。トラブルの発生は双方にダメージを与えますから、契約を締結する際は、契約書を用意することが大切です。
個人・法人問わず必見!コンサルティング契約書の作成方法
経営がうまくいかずに困っている、または新規ビジネスを立ち上げたいが戦略がわからないとお困りの方は、コンサルティングを依頼しましょう。コンサルティングを依頼する際に用意する契約書には、必ず記載すべき事項があるため、項目を確認しながら作成すると間違いがなく、安心です。
ここでは、コンサルティング契約書に書くべき事項と、作成時に活用できるひな形を紹介します。
コンサルティング契約書のひな形
コンサルティング契約書を作成する際に活用できるひな形を紹介します。
コンサルティング業務委託契約書
株式会社A(以下「甲」という)と株式会社B(以下「乙」という)は、甲が乙に委託するコンサルティング業務につき、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
(目的)
第1条 甲は、甲が運営する○○に関する助言、知識および技術の提供などのコンサルティング業務(以下「本業務」という)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(委託業務の内容)
本契約において、乙が甲に対して提供する業務(以下、「委託業務」という)は次の通りとする。
(1)甲の〇〇事業に関する助言
(2)甲の〇〇事業に関する企画
(3)甲の〇〇事業に関する分析
(4)甲の〇〇事業に関する運用、改善に関する助言
(2)甲の〇〇事業に関する広告
(競業避止義務)
第3条 乙は、本契約期間中、事前に甲の承諾を得ることなく、甲の同業他社に対して、本業務と同一または類似する業務を提供してはならない。
(再委託の禁止)
第4条 乙は、甲の承諾を得ることなく、本業務を第三者に委託し、または請け負わせてはならない。
(契約期間)
第5条 本契約の期間は、令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日までとし、期間満了の3カ月前までに甲乙いずれからも相手方に対して本契約の継続拒絶の意思表示がなされなかった場合、期間満了日からさらに○年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
(報酬)
第6条 甲は、乙に対し、毎月○○日に本業務の委託料として○○円(税込)を乙の指定する下記金融機関の口座に振り込みによって支払うものとする。ただし、振込手数料は、甲の負担とする。
記
銀行名:○○銀行○○支店
口座種類:○○預金
口座番号:○○○○○○○
口座名義人:株式会社 B
(知的財産権の帰属)
第7条 委託業務の過程で作成された著作物の著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)および委託業務の過程で生じた発明その他の知的財産またはノウハウ等に係る知的財産権は、全て甲に帰属するものとする。乙は、甲に対して前記著作物について著作者人格権を行使しない。
(秘密保持義務)
第8条 乙および乙が使用して本業務を取り扱う従業員は、本業務の遂行に関して知り得た甲の技術上、業務上および営業上の一切の情報を甲の事前の承諾を得ることなく第三者に開示、漏洩しないものとし、本契約終了後も同様とする。
(契約の解除)
第9条 甲または乙は、次の各号の一に該当した場合、何らかの通知催告を要することなく、直ちに本契約を解除でき、損害賠償を請求できるものとする。
(1)本契約に違反し、違反状態が解消されないとき
(2)手形もしくは小切手または裏書した手形もしくは小切手が不渡りとなったとき
(3)第三者から差押、仮差押、仮処分などの強制執行もしくは競売申し立てを受けたとき
(4)公租公課の滞納処分を受けたとき
(5)破産手続開始、民事再生手続開始または会社更生手続開始の申し立てをし、またはこれらの申し立てがなされたとき
(6)解散、合併または営業の全部または重要な一部の譲渡を決議したとき
(7)監督官庁から営業取消、営業停止などの処分を受けたとき
(損害賠償)
第10条
甲または乙が、契約の相手方当事者に損害を与えた場合には、その直接かつ現実に生じた通常損害に限り、賠償する。ただし、乙が賠償する損害額は、受領した報酬額を上限とする。
(反社会的勢力の排除)
第11条
甲および乙は、その役員(取締役、執行役、執行役員、監査役またはこれらに準ずる者をいう。)または従業員において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを確約し、これを保証するものとする。
(1) 反社会的勢力等が経営を支配していると認められる関係を有すること
(2) 反社会的勢力等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(3) 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力等を利用していると認められる関係を有すること
(4) 反社会的勢力等に対して暴力団員等であることを知りながら資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(5) 役員または経営に実質的に関与している者が反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係を有すること
2 甲および乙は、自らまたは第三者を利用して次の各号の一においても該当する行為を行わないことを確約し、これを保証する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
(4) 風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて相手方の信用を毀損し、または相手方の業務を妨害する行為
(5) その他前各号に準ずる行為
3 甲および乙は、相手方が本条に違反した場合には、催告その他の手続を要しないで、直ちに本契約を解除できるものとする。
4 甲および乙は、本条に基づく解除により相手方に損害が生じた場合であっても、当該損害の賠償義務を負わないものとする。また、当該解除に起因して自己に生じた損害につき、相手方に対し損害賠償請求できるものとする。
(合意管轄)
第10条 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
(協議事項)
第11条 本契約に定めのない事項については、甲乙で協議して決定するものとする。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。
令和○○年○○月○○日
甲 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 A
代表取締役 ○○ ○○
乙 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 B
代表取締役 ○○ ○○
引用元:【ひな形あり】コンサルティング契約書の書き方 | 記載内容と注意点|電子印鑑GMOサイン
テンプレートをコピーしてWordやPDFファイルなどに貼り付け、必要な部分を書き換えれば契約書が完成します。契約内容によっては削除・追加する項目もあるので、テンプレートをそのまま使わないことも大切です。必要に応じて加筆・削除しましょう。
契約書に書くべき事項
テンプレートを使わない、または大幅に加筆・削除する場合は、契約書に入れるべき項目を確認しておく必要があります。記載すべき項目が記載されていれば契約締結後のトラブルを未然に防げるため、作成前にチェックしておきましょう。
項目 | 内容 |
---|
業務内容と範囲 | コンサルティングを行う業務の内容と範囲を記載。コンサルタントがやらないことを記載すれば、範囲が明確になる |
コンサルティングの提供方法 | 対面でのアドバイス・調査レポートの提出など |
コンサルティング報酬と支払い方法 | 報酬金額と金額の決め方、支払い時期、支払い方法を詳しく記載 |
成果物の知的財産権の帰属先 | 業務で発生した成果物の知的財産権はどちらにあるのかを記載 |
再委託の可否 | コンサルタントが外部事業者に一部の業務を委託することの可否を記載。可とする場合は再委託先の情報の事前開示についても記載する |
契約期間 | プロジェクト単位・顧問契約など、ケースに応じて期間を明確に定める |
秘密保持 | 企業情報を入手するコンサルタントに秘密保持を徹底する大切な事項のため、必ず記載 |
契約解除 | 契約解除にあたる重要なケースを記載 |
損害賠償 | 債務不履行によって相手方に損害が生じた際の対応を記載 |
反社会的勢力の排除 | 反社条項について記載 |
準拠法と合意管轄 | どこの国の法律をもと基にして契約書を解釈するか、トラブル時はどこの裁判所を第一審の場所とするかを記載 |
契約書を作成する際は、上記11項目を必ず入れましょう。テンプレートにも記載されている項目ですが、内容を加筆修正する場合、誤って削除してしまうリスクもあります。契約書作成後、記載すべき項目に洩れがないか、作成時には改めて確認しましょう。
コンサルティング契約書に印紙は不要
準委任契約にあたるコンサルティング契約書を作成する場合、書面であっても印紙は不要です。
ただし、請負契約にあたるコンサルティング契約書を作成するときは、印紙が必要となります。契約内容に応じて印紙の有無が変わると考えておきましょう。必要になる印紙代は以下の通りです。
記載された契約金額 | 税額 |
---|
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 非課税 |
引用元:No.7102 請負に関する契約書|国税庁
契約内容を確認しても、準委任契約か請負契約か判断できないときは、専門家に確認してもらうようにしましょう。専門家に判断してもらえば、印紙の貼り忘れを防げます。なお、電子契約を行う場合は、準委任契約・請負契約どちらでも印紙は不要です。
コンサルティング契約書を作成する際の注意点
コンサルティング契約書はテンプレートを活用すればかんたんに作成できるものの、契約内容に応じて書類を修正する必要があります。修正する際に気を付けておきたいポイントがあるので、ここで紹介しましょう。
業務内容と範囲を明確に記載する
業務内容と範囲を明確に記載しておきます。コンサルティング契約のなかで、最もトラブルになりやすいのが双方の認識のずれです。契約書の業務内容や範囲があいまいだと、企業側の求めるものが大きくなるため、コンサルタントとトラブルが生じます。
トラブルによって契約が解除されたり、コンサルティングがうまくいかなかったりする恐れがあるので、事前に対策をしておきましょう。契約書に記載する業務内容と範囲が明確であれば、コンサルタントがすべき業務内容と範囲がはっきりとわかるため、双方が納得した状態でサービスを受けられます。
コンサルティングの頻度も忘れずに記載する
コンサルティングの頻度を記載することで、サービス提供におけるトラブルを防ぐことが可能です。サービスの提供方法は対面・メールや電話・チャット・レポートなど、さまざまな方法があります。提供方法を決める際に、どれくらいの頻度でコンサルティングを受けられるかも決めておきましょう。
頻度が決まっていなければ「何度でも相談していい」と判断されてしまう可能性もあり、コンサルタントに負担をかけるケースも考えられます。トラブルなくコンサルティングを受けるためにも月に1回、2週間に1回などサービス提供回数を確認しておきましょう。
コンサルタント・委託者双方に不利な項目がないかをチェックする
契約書を作り終えたら、コンサルタントと委託者双方に不利な情報がないかをチェックしましょう。コンサルタント側に有利、または委託者側に有利な内容が見つかると、契約を締結できず、再度作り直すことになります。コンサルティングを早急に受けられれるように、迅速に双方に不利益が生じない内容になっているかを確認することが重要です。
コンサルティング契約書でよくある質問
ここでは、コンサルティング契約書でよく寄せられる質問を紹介します。
コンサルティング契約書は無料で作成できる?
コンサルティング契約書は、無料で作成することも可能です。テンプレートをWordに貼り付け内容を変更して印刷すれば、無料で作成できます。電子契約の場合は、Wordファイルを相手に送るだけで済みます。
ただし、ファイルが誰でも手軽に内容を変更できる状態でのやりとりには、注意が必要です。業務内容や範囲、報酬などの面で内容が変更されると、後々トラブルになります。電子契約をする場合は、書類作成から内容が改ざんされていないことを証明するタイムスタンプの付与などの機能を使える、電子契約サービスを利用することがおすすめです。
コンサルティング契約書で印紙が必要なケースもある?
コンサルティング契約書でも、印紙が必要になるケースはあります。コンサルティング契約は契約内容によって準委任契約と請負契約に分かれ、請負契約は印紙が必要です。コンサルティング業務によって発生する成果に報酬を支払う場合は請負契約に該当するので、収入印紙を貼り付けなければなりません。
コンサルティング契約書なしでもサービスを受けられる?
コンサルティング契約書を作成しなくても、サービスを受けることは可能です。
コンサルティング契約は口約束でも締結できるため、必ずしも契約書を作成する必要はありません。ただし、契約書を作成しない場合のコンサルタント側のリスクとして報酬が支払われない・口頭で聞いた業務内容から大きく外れているなどのことがあります。委託者側にも、口頭で伝えたコンサルティング業務が履行されないリスクがあるため、注意が必要です。
安全なコンサルティング契約書を作成したいなら電子印鑑GMOサインにご相談ください
コンサルティング契約書は、コンサルタントが委託者にサービスを提供する旨が記載されたものです。コンサルティング契約は双方の認識のずれからトラブルが生じやすいので、契約書を作成したうえで締結することが重要になります。ここで紹介したひな形や記載すべき事項を参考に、双方に問題のない契約書を作成しましょう。
内容改ざんのリスクを防ぎつつ、安全に電子契約を締結したいと考える方は、電子印鑑GMOサインにご相談ください。
GMOサインでは、内容が改ざんされていないことを証明するタイムスタンプの付与機能に加え、ファイルの変更・削除などの操作ログの履歴を確認する機能も用意しています。
そのほかにもさまざまな機能を標準装備しており、すべての機能を月額9,680円(税込)でお使いいただくことが可能です。電子契約の導入を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。