とモヤモヤを感じている方も多いのではないでしょうか。特に、事務作業経験のないフリーランスの方にとっては、分かりづらいビジネス書類だと思います。
後ほど詳しく解説しますが、ざっくりと説明すると、注文書や発注書に対して返信する書類が注文請書です。LINEで友達や恋人からのメッセージに返信するのと同じく、注文請書を使って発注者に注文を承りましたとメッセージを返信すると考えればイメージしやすいでしょう。
本記事では、注文請書の概要を始め、注文書との違い、収入印紙が必要となるケースなど、注文請書に関して深掘りして解説しています。
本記事を読むことで、注文請書について理解を深められ、仕事で必要になった場合でも慌てることなく対応できるようになります。
目次
注文請書とは
冒頭で少し触れましたが、注文書や発注書に対して作成する書類が注文請書です。見積書と請求書のように、注文書と注文請書がセットになっている場合が多いでしょう。発注者からの要望で作成するパターンが多いかと思います。
請書の言葉には、「承知しました、または引き受けました」などの旨を書き、相手方に差し出す文書という意味があります。つまり、注文請書には、発注者に対して「注文を引き受けました」との意思表示を表す意味合いが込められています。
注文書は全く違うビジネス書類
では、注文書と注文請書の違いは何でしょうか。1つ目の違いは、書類の作成者です。注文書は発注者が作成しますが、注文請書は受注者が作成します。
2つ目の違いは、書類作成義務の有無です。注文書には書類作成の義務が発生するケースがあります。もし、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に関わる仕事であれば、親事業者が定められた内容を記載した注文書を作成し、下請事業者に渡さなければいけません。
下請法の第三条には、次のように明記されています。
(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
引用元:e-GOV法令検索
一方、注文請書の作成義務に関しては、法律上で定められておりません。このように、作成者と作成義務の2点において、注文書と注文請書には明確な違いがあります。
それでは、作成義務がないにも関わらず、なぜ注文請書を作成するのでしょうか。注文請書には次の役割があるため作成を求められます。
注文請書の役割
主に次の2つの役割があるといえます。
・発注と受注に関するトラブルの未然防止
・取引ミスを減らす
注文書を作成したにも関わらず、期日になっても商品は納品されず、挙げ句の果てには受注先から「そのような取引をした記憶はない」と言われた経験はないでしょうか。このように口頭での取引では、受注者との間でトラブルが起きるリスクが潜んでいます。
注文書を発行し注文請書を受領している場合には、取引内容が明確であるため証拠力も高まります。1つ目の役割は、発注者と受注者のトラブルを未然に防止する機能です。
また、口頭での取引では、商品の数量間違い、納品期日や支払い方法の誤認など、発注者と受注者の間で擦れ違いが生じる恐れもあります。注文請書を作成することで、改めて発注者と内容を確認でき、細かな取引ミスの軽減にも繋がります。これが2つ目の役割です。
注文請書と収入印紙
契約書と同じく、注文請書は取引内容により印紙税の課税対象となる場合があります。課税文書に該当する場合には、収入印紙を貼らなければなりません。注文請書を作成する際には、収入印紙が必要かどうかも合わせて確認しておくべきです。
印紙が必要なケース
それでは、注文請書が課税文書に該当する取引はどんな仕事内容なのでしょうか。判断の基準となるのが、印紙税法の第2号文書です。第2号文書は、請負に関する契約書に関して記載されています。請負契約とは、請負人が完了した仕事に対して、発注者が報酬を支払うタイプの契約のことです。
主に請負契約で仕事を進めている代表的な業界を挙げると、建設業界や不動産業界、船舶業界を始め、俳優や音楽家などの芸能関係も含まれます。具体的な仕事は、家屋の建築、建売住宅の供給、家電の取り付けや物品の加工などです。
発注者の意図に沿って業務を完了し代金を受け取る取引が、請負契約と考えるとイメージしやすいでしょう。
印紙が不要なケース
印紙が不要な取引とは、印紙税法に定める20の文書に該当しない場合です。たとえば、次の場合は印紙が不要になります。
・契約金額が1万円に満たない契約書
・電子契約書
・車やコピー機のリース契約
印紙税法に定められた課税文書は数多くあります。さらに収入印紙の金額は仕事の内容や契約金額により変わるため、印紙が必要となるか迷うかもしれません。もし判断に迷った時は、専門家や国税庁などの公的機関へ問い合わせましょう。
収入印紙の金額
収入印紙の金額は、発注者との取引金額により変わります。第2号文書における収入印紙の金額について、国税庁のHPから一部抜粋し次の表にまとめました。細かな注意事項については省略しているため、印紙を貼る前には必ず国税庁のホームページにて最新情報を確認してください。
契約金額 | 収入印紙の金額 |
---|
1万円未満 | 不要 |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
参照:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
注文請書の必要性
作成義務がないうえに、印紙代もかかる注文請書を作成する必要が本当にあるのか、と疑問を持った方もいるのでないでしょうか。
確かに注文請書を作成する義務はありません。また、民法において契約の成立に関しては、次のように記載されています。
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用元:e-GOV法令検索
つまり、注文書と注文請書などの書類を作成せずとも、発注者と受注者の双方の意思表示が合致すれば契約は成立し、意思表示を確認する方法は口頭でも良いということです。法律では、双方の意思表示が合致しているかどうかに重きを置いています。
法律上は注文請書を作成する義務はないものの、取引でのトラブルを防止する意味でも注文請書を作成しておくと安心できます。
注文書だけでも成立する
基本的に注文請書を作成する義務はありません。しかし、日常的に取引のある相手から注文書や発注書を受け取ったものの、注文を断りたい場合は注意が必要です。
法律上(商法509条第1項,第2項)、ふだん取引している相手から契約の申し込みを受けた場合、申し込みを受けるかどうか返答する必要があります。また、返答していない場合は、申し込みに承諾したとみなされると読み取れます。
よって、ふだんから取引をしているケースでは、注文書だけでも契約は成り立つのです。
受注者側に何らかの事情があったとしても、取引に応じられない場合は必ずその旨を伝える必要があります。そのため、注文書を受領した場合は、注文請書を作成し相手方に送付したほうが無難です。
取引先と関係が長い場合は、注文請書の対応について十分に注意しましょう。
注文請書に効力はある?
書面に契約内容を明記したとしても、書類作成の義務がないため効力が無いと思う方もいるでしょう。確かに注文請書だけでは証拠になりませんが、注文書とセットで発行することで効力を発揮します。
なぜかというと、発注者と受注者の意思が合致していることを証明できるためです。契約は双方の意思表示が合致した場合に成立し、書面によることは不要です。しかし、注文書と注文請書を作成することで、発注者と受注者の意思表示の合致を書面に残し、証拠とすることができます。
また、注文請書だけでは効力を発揮しないのは、作成者からの一方的な意思表示に留まり、発注者の意思を確認できないためです。注文書と注文請書がセットになることで、初めて証拠として効果を発揮すると覚えておきましょう。
収入印紙に割印は必要?
知っている方もいると思いますが、収入印紙を貼った場合は割印(消印)を押す必要があります。法律上も収入印紙を貼った当事者が割印を押すよう、印紙税法第8条第2項に定められています。
また、割印の方法は、作成者、代理人、使用人や従業員の印章や署名でも良いとされており、はっきりと割印されていることが分かれば問題ありません。
注文請書を効率的に発行する方法
取引内容によっては注文請書に印紙が必要となります。しかし、書類を作成する度に印紙を貼るのは面倒に思うでしょう。実は、注文請書を作成しても課税文書に該当せず、収入印紙を貼らずに済む方法があるのです。
注文請書のPDF化
まずは、注文請書をPDF化することです。国税庁は「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」で、注文請書の現物を発注者に渡さない限り、ファクシミリ通信と同様に課税文書の対象にはならないと説明しています。
よって、注文請書を作成しPDF化して発注者に送付することで、収入印紙を貼る必要がなくなるのです。
ただし、PDFを送信した後日に注文請書の現物を発注者に送付した場合は、相手方に交付したとみなされ課税文書の対象になります。うっかり現物を送付しないように注意しましょう。
電子契約サービスを活用する
PDF化の他に、電子契約サービスを活用する方法があります。電子契約サービスもPDFと同様、課税文書の対象とならないため収入印紙は不要です。
電子契約サービスを利用すると注文請書だけでなく、契約書の収入印紙も必要なくなります。なぜかというと、電子メールに添付した契約書や電子契約書でのやり取りについて、文書の作成に該当しないためです。ゆえに、電子化された契約書に印紙は必要ありません。
また、電子契約サービスを使うことで、注文請書や契約書などの書類の保管スペースや保管費用、印刷用紙のコスト削減など他のメリットもあります。注文請書の作成や保管に面倒を感じている方は、是非、電子契約サービスの活用を検討してみてください。
注文請書のテンプレート
最後に、注文請書を作成したことがない方向けに、直ぐに使えるテンプレートを2つ紹介します。
① Microsoft Office 公式 (Word版)
② バックオフィスラボ
しっかりひな形が作成されているため、直ぐにでも活用できます。是非、一度利用してみてください。
Microsoft Office (Word版) のテンプレート
商品注文書や売買契約書のテンプレートをダウンロードできます。テンプレートは注文書ですが、書き換えて使えるため注文請書として書類作成が可能です。Microsoft Officeを使っている場合は、直ぐにテンプレートを検索し確認してみてください。
バックオフィスラボのテンプレート (Excel版)
バックオフィスラボは、株式会社リコーが運営しているWebサイトです。同サイトでは、注文請書を始め、見積書や請求書に加え経理関係の書類のテンプレートもダウンロード可能です。書類作成が苦手な方にとって、心強い味方になってくれること間違いなしです。
まとめ
本記事では、注文請書の説明から、注文書との違いや印紙が必要となる場合など、注文請書に関して網羅的に解説してきました。改めて、本記事でのポイントを振り返りましょう。
・注文請書とは、注文書に対して返信する書類
・注文請書が持つ2つの役割
① 発注と受注に関するトラブルの未然防止
② 取引ミスの軽減
・取引内容により収入印紙が必要
・PDF化により収入印紙は不要
契約は口頭でも成立し、注文請書を作成する義務は法律で定められていないため、わざわざ手間をかけて作成する必要はないと感じているかもしれません。しかし、トラブルの未然防止に重きを置き、作成を求めている企業が多いでしょう。
少しでも煩わしい手間を省きたいと思っている方は、この機会に電子契約サービスの利用を考えてみては如何でしょうか。