企業には文書管理マニュアルが必要と聞いたけれど、どんなものかわからない
とお困りではありませんか。
文書管理マニュアルは、社員がルールに従って文書管理業務を遂行するために必要なものです。マニュアルの内容を把握して作成することで、業務トラブルを減らすことができます。
この記事では、文書管理マニュアルの概要や必要性、作成方法までを詳しく解説します。マニュアルを作成する際に活用できるサンプルと、作成時の注意点も記載するので、マニュアル作りの参考にしてください。
目次
文書管理マニュアルとは?
企業別に作成される、文書管理マニュアルをご存じでしょうか。耳にしたことがあるけれど、どのような内容なのか知らないという方も多いかもしれません。似た言葉として、文書管理規程というものもあります。ここでは、文書管理マニュアルについてと文書管理規程との違いを解説します。
文書管理業務に対するルールを定めたマニュアル
文書管理マニュアルとは、文書管理の業務ルールを定めたものです。社内にはさまざまな文書が存在し、文書別に「誰が」「いつ」「どこで」管理するかが異なります。ルールを明確にしておけば、文書の管理場所や管理者がすぐにわかるため、文書の紛失や保管場所の間違いなどのトラブルを防げます。
文書管理マニュアルの作成は、法的に義務付けられているものではありません。必ずしも作成する必要はないのですが、業務トラブルを減らしたいと考える企業は、作っておくといいでしょう。
文書管理マニュアルと文書管理規程の違い
文書管理マニュアルと文書管理規程の違いは、記載されている内容です。
文書管理規程とは、文書管理の在り方を記載した書類です。文書管理とは何か、どのように管理するかなどの基本的な項目しか書かれていないため、社内全体に共有できます。
一方、文書管理マニュアルは文書管理規程に倣って具体的イなルールを定めたものです。文書管理規程をもとに「いつ」「どこで」「誰が」どの文書を管理するかという細かなルールを定めているので、より詳しい内容を把握できます。
部署によって取り扱う文書が異なる場合は、部署別に文書管理マニュアルを作成するといいでしょう。
文書管理マニュアルが必要な理由
文書管理マニュアルの作成に法的な義務はないものの、企業には必要だといわれています。なぜマニュアルが必要なのか、その理由を見ていきましょう。
社内の業務効率化を図れる
文書管理マニュアルが必要だといわれる理由の1つは、社内の業務効率化が図れる点にあります。マニュアルなしで文書管理業務を行うと、文書の保管場所がわからず、適当に保管されてしまうかもしれません。管理者がわからなければ聞くこともできないので、業務に支障が出てしまいます。
また、文書のなかには数年間の保管が法律で義務付けられているものもあります。保存期間別の書類を見てみましょう。
保存期間 | 文書 |
---|
2年 | 健康保険に関する書類 |
3年(経過措置として3年、最終的には5年に延長予定) | 労働者名簿 賃金台帳 雇用・退職に関する書類 災害補償に関する書類 |
4年 | 被保険者の雇用保険に関する書類 |
5年 | 従業員の身元保証書、または身元引受契約書 産業廃棄物管理票 |
7年 | 仕訳帳や売上帳などの帳簿 棚卸表や注文書、契約書などの書類 扶養控除等申告書 |
10年 | 株主総会の議事録 取締役会の議事録 |
永久保管 | 定款 株主名簿 登記や訴訟に関する書類 重要な人事に関する書類 |
これらの書類は一部で、ほかにも保管が義務付けられている書類があります。社員全員がすべての書類の扱いを覚えることは難しいため、マニュアルを作成しておくと便利でしょう。マニュアルを作っておけば、文書を誤って破棄する恐れもなくなります。
また、マニュアルの作成によって文書別の保管場所も把握しやすくなるため、業務の効率化を図れます。対応に困る文書があっても、マニュアルを見れば管理者がわかりますから、すぐに相談することも可能です。これは、大きなメリットといえるでしょう。
法律に則って業務を行える
文書管理マニュアルを作成することで、法律に則った業務の履行が可能です。前述したように、会社で作成する文書のなかには保管が義務付けられているものもあります。会社法で定められている保管年数を経過しないうちに破棄すると、第976条の違反となり100万円以下のペナルティが科せられる可能性もあります。
また、帳簿書類を破棄してしまった場合は、納税のペナルティも科せられる恐れがあります。青色申告の取り消し・追徴課税・控除の取り消しが行われる可能性もあるため、保管が義務付けられている文書は誤って破棄しないよう徹底しなければなりません。
(過料に処すべき行為)
第九百七十六条 発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、社債管理補助者、事務を承継する社債管理補助者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
引用元:会社法 | e-Gov法令検索
文書管理マニュアル・文書管理規程の作成方法
自社に文書管理マニュアルや文書管理規程がない場合は、早めに作成することがおすすめです。作成したいけれど作り方がわからないとお困りの方のために、ここで作成方法を解説します。
STEP
企業内にある文書の状況を把握する
まずは企業内にある文書の種類や保管方法などの現状を確認し、解決すべき課題を把握しましょう。現状を確認すれば、どのような部分にルールが必要か、ある程度理解できます。課題を抽出することで、効率的にルールを定めることが可能となりますから、マニュアル作りもスムーズに進められるでしょう。
STEP
文書管理規程を作成する
課題を抽出したら、文書管理規程を作成します。文書管理規程はマニュアルのベースになるものです。文書管理規程があいまいだとマニュアル作りも難航するので、必要な項目を忘れずに記載しておきます。文書管理規程に必要な項目は以下の通りです。
・文書管理規程の適用範囲
・文書の保管方法と保管期間
・文書の参照・編集に関するルール
・文書の廃棄方法と手順
・文書管理規程に違反した際の処罰内容 など
文書管理規程は部署別ではなく、社内全体に共有されるルールです。1つの部署で作成すると、ほかの部署から内容への不満が出る恐れがあるため、複数の部署で話し合って内容を決めましょう。
STEP
マニュアル適用範囲と記載する項目を決める
文書管理規程作成後、それをもとにマニュアルを作成します。マニュアルを作成する際は、適用範囲やどのようなルールを定めるかを検討しましょう。
部署によって取り扱う文書が異なるため、適用範囲や保管方法、保管期間は部署別に定める必要があります。一方で、廃棄方法や違反した際の処罰に関しては規程から変更する必要がないため、変えなければならない部分のみを話し合うようにしましょう。
STEP
文書のプロセス別のルールをチェックする
文書管理規程とマニュアルの作成が完了したら、文書のプロセス別に定められたルールもチェックしておきましょう。文書は発生・伝達・保管・保存・廃棄という5つのプロセスを進みます。マニュアルにプロセス別のルールがわかりやすく記載されていれば、社員がルールの詳細を把握したうえでの業務の履行が可能です。
プロセス別に盛り込みたいルールは以下の通りです。
プロセス | 盛り込みたい内容 |
---|
発生 | 日付や作成者などの項目 文書の書式や文体 文書の綴じ方 |
伝達 | 文書の承認フロー 承認された文書の処理ルール 社外に文書を発信するルール |
保管 | 文書の保管場所 ファイル管理表の作成 |
保存 | 文書の保存場所 ファイル管理表の更新 |
廃棄 | 文書の廃棄方法 廃棄の手順 |
発生は文書が作成されるプロセスなので、文書に記載する項目や書式、綴じ方のルールを定めます。伝達は作成した文書を確認・承認してもらうフローで、承認された文書を社外に発信する際のルールを定めます。
保管と保存は似ていますが、内容が少し異なるので注意が必要です。作成されたばかりの文書・使用頻度の多い文書・緊急時に必要となる文書は社内で保管されますが、作成から1年を過ぎた、使われることのない文書は書庫や外部の保管スペースなどに保存されます。これが、保管と保存の違いです。文書を保管・保存する場所はそれぞれ異なりますから、ルールを定めましょう。ルールを定める際、文書がどこにあるか・誰が管理しているかなどを記載したファイル管理表を作成しておくといいでしょう。管理表があれば、文書がどこにあるかを迅速に把握できます。
廃棄は文書の最後のプロセスで、廃棄方法や手順のルールを定めます。廃棄方法は文書が紙であるか、電子文書であるかによってそれぞれ異なるため、廃棄方法を詳しく記載しておきましょう。
作成した文書管理規程とマニュアルに、プロセス別のルールがしっかり記載されているかを確認することも大切です。文書管理におけるトラブルを防ぐためにも、必要なルールが文書管理規程とマニュアルに盛り込まれているかをよく確認しましょう。
STEP
作成したマニュアルを社内に共有する
文書管理規程とマニュアルが完成したら、社内全体に共有します。規程とマニュアルを共有すれば、社員全員がルールに則って文書管理業務を行うことが可能です。ただし、一度目を通すだけですべてを理解できる人は少ないため、必要に応じて講習会を開くといいでしょう。
文書管理マニュアルを作成するときのポイント
文書管理マニュアルの作成方法はわかったけれど、上手に作成できるかわからないとお悩みの方も多いでしょう。ここで作成時のポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
紙文書と電子文書の取り扱い方法を具体的に定める
電子契約を導入している企業は、紙文書と電子文書それぞれのルールを定めましょう。紙と電子文書は性質が異なるため、保管場所や社外への発信ルールなどが異なります。どちらか一方のルールのみ定めていると、もう一方のルールがあいまいになり、業務に支障が出るかもしれません。
電子契約を導入している企業は紙と電子文書のルール、紙文書のみ対応している企業は紙のルールを決めましょう。今後電子契約を導入する予定の企業は、導入前に電子文書の文書管理マニュアルを用意しておくことをおすすめします。
導入前にマニュアルを定めておけば、電子文書の作成方法や保管場所、承認フローに迷うことはありません。社員も安心して業務を履行できるでしょう。
ルールが複雑にならないよう注意する
マニュアルを具体的に作ることに専念するあまり、内容が複雑化する恐れがあります。ルールが明確に定められていれば、社員が些細な問題に悩むことはないでしょう。ただし、ルールを把握するまでに時間が必要となりますから、マニュアル導入直後、しばらくの間は業務効率が低下するかもしれません。
マニュアルを作成する際は、内容を具体的にするだけでなく、誰でも理解しやすいものに仕上げることが大切です。作成後、数人に確認してもらい、必要に応じて内容の修正を行いましょう。
文書に関する権限を明確にしておく
文書管理マニュアルを作成する際に必ず決めておきたいのが、文書の権限です。社内で作成する文書のなかには、社員全員が閲覧できるものから、上層部のみが閲覧・編集権限を持つ重要度の高い文書もあります。
重要な文書に権限を定めていないと、内容が勝手に変更されたり、社外に流出したりする恐れがあるため、文書別に権限を明確に定めることが重要です。
文書管理マニュアルのひな形を参考にすることもおすすめ
文書管理マニュアルの作成に悩んだら、ひな形を参考にしましょう。文書管理マニュアルのひな形で検索すると、さまざまなサンプルが出てくるため、自社の業務内容にあったものを選ぶことがおすすめです。
たとえば、農林水産省が提供する「33文書管理手順書」は、食品製造会社向けのひな形になっています。業務内容にあったサンプルを選ぶことで変更箇所が少なく済むため、マニュアル作りもスムーズに進むでしょう。
文書管理規程を電子文書にすることも可能
文書管理規程やマニュアルを共有する際、紙ではなく、電子文書化するのもおすすめです。紙の規程やマニュアルを社員全員に渡すと、印刷にかかる費用が高くなります。コスト削減のために部署別に1通を配布した場合、社員全員が規程やマニュアルを把握することは難しくなるでしょう。
規程やマニュアルを電子文書にして、社員全員が閲覧できるサーバーに保管しておけば、コストをかけずに共有できます。必要なときにいつでも閲覧できるため、規程やマニュアルに違反するリスクを減らせるでしょう。
社員全員が閲覧できるサーバーがすでにある場合は規程やマニュアルをスキャンするだけで済みます。サーバーがなく、今後電子契約の導入を考えている場合は、どちらも用意できる電子契約サービスを導入しましょう。
文書管理マニュアルの電子化を検討している方は電子印鑑GMOサインにご相談ください
文書管理マニュアルは、文書管理に対するルールを定めたものです。文書管理規程をもとに作成されるため、どちらもない場合は文書管理規程から作成しましょう。規程をもとに部署に適したマニュアルを作成すれば、文書管理業務におけるトラブルを最小限に抑えられます。
文書管理マニュアルや規程を電子化し、社員全員が閲覧できるサーバーも用意したい方は電子印鑑GMOサインにご相談ください。
電子印鑑GMOサインは、電子契約に必要な機能を多数そろえたサービスです。スキャンした文書の保管はもちろん、社員全員がアクセス・閲覧できるサーバーもご利用いただけます。
文書管理マニュアルの電子化だけでなく、電子契約に必要な機能も活用できるため、電子契約の導入を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。