テレワークの導入、ペーパーレス化による業務効率化、電子帳簿保存法への準拠などを目的として、紙の文書から電子データによる電子契約へ移行する企業が増加しています。しかし、導入や定着するまでの手間がかかる、社内の理解を得られないなどの理由で移行できていないケースも少なくありません。また、電子契約は偽造のリスクがあるとしてセキュリティに不安を抱える企業も多いようです。
そこで本記事では電子契約への移行を進めるうえで、電子契約の方法、印鑑の必要性、セキュリティを高める手段についてお伝えします。
目次
電子契約利用企業の現状
電子契約を利用する企業は年々増加しています。2023年3月、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アールが発表した「企業IT利活用動向調査2023」によると、電子契約を利用している企業は、73.9%(2023年)です。2022年が69.7%ですから、4.2%の増加となっています。
また、2023年10月にペーパーロジック株式会社が発表した「2023年「電子契約」に関する実態調査」でも、電子契約利用企業は73.2%とほぼ同じ結果です。
電子契約を利用する理由
前出の「2023年「電子契約」に関する実態調査」によると、電子契約を導入した理由で多いのは、次のようなものです。
- テレワーク対応のため(66.2%)
- 業務効率化・生産性向上のため(57.7%)
- 印紙税削減のため(32.4%)
上位の理由は、2022年も同様です。新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、多くの企業がテレワークを導入しました。しかし、紙の文書での契約は、会社に出向かなければなりません。そこで、自宅にいても契約業務を行う手段として、電子契約を導入した企業が増加していると推測できます。
また、注文請書や契約書など課税文書を紙の文書で履行すると契約金額によっては印紙税が発生し、コスト増につながります。しかし、電子契約であれば金額の多寡に関わらず印紙税は必要ありません。そのため、経費節減策として、電子契約を導入する企業も増えている傾向にあります。
電子契約を利用しない理由
テレワーク対応や効率化対策として電子契約を導入する企業が増加しています。これに対し、電子契約を利用しない理由として多いのは次の点です。
- 導入が大変(50.0%)
- メリットがよく理解できない(25.0%)
- 運用定着が大変(25.0%)
電子契約を利用しない理由も利用する理由と同様にトップ3は2022年と変わっていません。ただ、「導入が大変」は2023年が50.0%なのに対し2022年は66.7%です。
つまり、2022年から2023年の1年で導入に対するマイナスイメージが大きく減少していることがわかります。2位、3位も33.3%から25.0%へ減少しているため、電子契約のメリットや運用方法が理解できれば、導入する企業も増えているということです。
電子契約を正しく理解するためのポイント
電子契約を利用しない理由である「導入が大変」は、単純に紙の文書での契約から電子契約になれば多くの業務プロセスが変わってしまうからだけではありません。電子契約のルールを把握するのが大変、多くの電子契約サービスから適切なサービスを選択するのが大変なども考えられます。
電子契約には、紙の文書での契約では聞かれない用語が多く存在するため、用語を正しく理解していないと電子契約を導入しても適切に利用できません。ここでは、電子契約でよく使われる用語やルールについて解説します。
電子契約における印鑑の必要性
電子契約を行う際、印鑑は必要なのかは気になるポイントではないでしょうか。実は紙の契約では民法第522条、電子契約では電子署名法第3条により、印鑑を押印しなくとも基本的に契約は成立します。
重要なのは双方の合意であり、押印は形式的なものでしかありません。
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
第二章 電磁的記録の真正な成立の推定
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
引用元:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索
電子契約での印鑑は、「電子印鑑」「電子印影」「電子署名」「タイムスタンプ」など似たような用語が多く、これが電子契約のルールを複雑にしている要因の一つでもあります。しかし、基本的には紙の契約でも電子契約でも押印は必ずしも必要なものではないことは理解しておいてください。
なぜ、契約時に法律で義務づけられていない押印をするのか
法律により押印は必ずしも契約時に必要だとはされていません。
しかし、ほとんどの企業では契約を交わす際に押印をしているのではないでしょうか。その理由は押印によって契約書の証拠能力が高まるからです。
一般的に押印をするということは、契約内容を確認したうえで、その内容に同意し、なおかつ自身の意思で契約を締結することを認めたと認識されます。
万が一、契約内容についてトラブルが起きても、契約書に同意の意思を示す押印があることで契約成立の証明となるため、押印は必要だとされているのです。これは電子契約でも同様で、電子データに押印をすることで、契約の証拠能力が高まります。
電子契約において「印鑑」の代わりになるものとは
電子契約を行う際、紙の契約で押印する印鑑の代わりになるのは、「電子印鑑」「電子印影」「電子署名」「タイムスタンプ」のどれなのかはわかりにくいかもしれません。結論からいえば前述したように押印自体には法的根拠がないため、どれを使っても契約自体は成立します。
しかし、電子契約の場合、紙の文書に比べ改ざんが容易であるため、本人性や非改ざん性の担保が欠かせません。そこで、「電子印鑑」「電子印影」「電子署名」「タイムスタンプ」のそれぞれの概要とセキュリティについて解説します。
電子印鑑・電子印影
電子印鑑は二つの種類があります。
一つは印鑑の印影をパソコンやスマートフォンに取り込み画像ファイルにしたもの。そしてもう一つは印影のなかに識別情報が含まれた画像データです。印影を取り込み画像ファイルにしたものは、「電子印影」とも呼ばれます。
印影を画像ファイルにしたものは、Acrobat ReaderやWord、ExcelなどのOfficeソフトなどで容易に作成でき、すぐに使えるのがメリットです。
たとえば、上述したWordで作成した契約書にWordで作成した画像ファイルを押印すれば、簡単に電子データが作成できます。しかし、偽造されるリスクも高いため、重要な契約ではなく社内稟議の承認やメールの署名などに使うのがおすすめです。
これに対しもう一方は、印鑑所有者データや押印した際のデータが含まれます。画像ファイルのように偽造も容易にはできないため、画像ファイルに比べ高いセキュリティレベルの確保が可能です。
電子署名
電子署名とは、電子データに付与する署名です。
紙の文書でも印鑑の代わりにサインをする場合があるかもしれません。しかし、電子署名が紙の文書に行う署名と異なるのは、電子署名はサインであり印鑑でもある点です。
電子署名は電子証明書を用いて行われます。
電子証明書とは、発行者が作成するのではなく、契約の第三者である認証局(CA)が契約を行う本人の認証や審査を経て発行されるものです。
また、電子署名を電子データに付与すると、電子証明書のセットで非改ざん性を担保するタイムスタンプも付与されます。そのため、電子証明書を用い電子署名をした電子データは、本人性と非改ざん性が担保されるもっともセキュリティの高い電子契約が可能です。
タイムスタンプ
タイムスタンプとは、ハガキや手紙などに付される消印のようなものです。
第三者である時刻認証局(TSA)がタイムスタンプを発行した時点で電子データが存在していたこと、その後に改ざんがされていないことを証明します。
紙の文書での契約で消印を付すことはありません。しかし、電子契約の場合は紙の文書に比べ改ざんがしやすいため、信用性に不安が残ります。そこで、第三者によりタイムスタンプを発行することで、非改ざん性を担保しているのです。
電子契約を利用するメリット
電子契約を導入する際の不安の一つである、印鑑に関する用語、ルールについて理解したところで、次は電子契約を利用する主なメリットについて解説します。
契約業務の効率化が実現する
電子契約であれば、担当者がオフィスに不在で契約内容の確認ができない、印鑑がオフィスにあるため帰社するまで契約書を作成できないといった心配がありません。
また、印刷して製本、押印、郵送といった手間がなくなり、作成したらすぐに相手に送り確認してもらえます。その結果、これまで数日から1週間以上かかっていた契約業務の手間を大幅に削減することが可能です。
多様な働き方が実現する
「2023年「電子契約」に関する実態調査」において電子契約を導入した理由でもっとも多かったのは、「テレワーク対応のため」です。
この結果からもわかるように、電子契約の利用により自宅や外出先、サテライトオフィスなどどこからでも契約業務が行え、多様な働き方が実現します。
セキュリティの強化につながる
電子データ偽造の不安があるため電子契約の導入に踏み切れない企業も少なくありません。しかし、上述したように電子証明書と電子署名、タイムスタンプをセットで利用すれば、高いセキュリティレベルを確保できます。
また、電子契約は契約のプロセスがすべて可視化されるうえ、保存時には閲覧権限の管理も可能なため、適切に利用すれば、偽造や不正などのリスク低減も可能です。その結果、紙の文書による契約よりもセキュリティ強化につながります。
電子契約サービスを選択するポイント
電子契約をスムーズに行うには、サービスの選択も重要なポイントの一つです。ここではそのなかでも事前にチェックすべき三つのポイントを解説します。
電子帳簿保存法に準拠しているか
電子帳簿保存法は、数年ごとに改正が行われています。そのため、選択した電子契約サービスが最新の電子帳簿保存法に準拠していないと、余計な手間がかかってしまう場合があります。また、場合によっては法律違反になってしまうリスクもあるでしょう。そのため、選択時点で最新の電子帳簿保存法に準拠しているかどうかの確認は必須です。
セキュリティ対策が万全か
ひと口に電子契約サービスといっても、その種類は多様でセキュリティレベルも大きく異なります。導入費用だけで選択してしまうと、高いセキュリティレベルを実現するために別途費用がかかってしまうケースも少なくありません。
セキュリティ面で確認すべきポイントは、電子署名とタイムスタンプに対応しているかどうかです。電子データの本人性や非改ざん性を担保するうえで外せないポイントとなるため、必ず確認してください。
お試しサービスがあるか
セキュリティレベルが高く、必要十分な機能を有した電子契約サービスだとしても、扱いが困難では社内での普及が進みません。そのため、お試しサービスがあるかどうかも重要なポイントです。
また、お試しサービスがあっても月の利用に制限があると十分に試すことができないため、よく検討してください。
スムーズな電子印影の利用、電子契約の実現には電子契約サービスがおすすめ
電子契約は、いくつかの調査ですでに70%以上が利用しているという結果が出ています。しかし、電子契約のルールがわからず実際に業務への導入が進んでいない企業も少なくありません。たとえば電子契約において印鑑は必要なのか、必要であればどうすればよいのかがわからないケースは多いのではないでしょうか。
電子契約には業務効率化やセキュリティ強化、多様な働き方の実現など多くのメリットがあります。そのため、利用のルールさえしっかりと把握すれば、社内の理解も得やすくなり、スムーズな導入が進むでしょう。
特に重要なルールは印鑑の押印で、紙の文書であれば印鑑を押印することで契約は成立します。しかし、電子契約の場合、電子印鑑だけではセキュリティ面で不安が残るため、電子証明書を使った電子署名とタイムスタンプの利用が必須です。そのため、電子契約サービスを選択する際は、電子署名を容易に使えるかどうかの確認を徹底しましょう。
そこでおすすめなのがGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する「電子印鑑GMOサイン」です。
電子署名が簡単に使えるのはもちろん、改正電子帳簿保存法に準拠しているため、契約業務の効率化を実現しつつスムーズな電子契約を可能にします。
また、GMOサインのお試しフリープランは月の利用制限がなく、何度でも利用できます。
電子契約の導入を検討される際は、まず、お試しサービスに登録されてみてはいかがでしょう。
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